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久保建英の成長プロセスをスペインの名指導者が解明「メッシとどこか重なる」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【現在の4-3-3の戦術的特徴とマッチ】

 ラ・レアルというクラブにいることで、久保は変身し続ける。その成長プロセスについて、エチャリは丁寧に説明した。

「ダビド・シルバというファンタジスタが引退した今シーズン、タケはエースに近い。ポジションも含めて後継候補になる? うーん、昨シーズンのような4-4-2中盤ダイヤモンドのトップ下でも、資質はあるはずだが......。

 そもそも現在のラ・レアルの4-3-3の戦術的特徴は、中盤の3人が必ず違う高さを保つ点にある。そこで3トップが下がり、横にスライドし、実は4-4-2の中盤ダイヤモンドに近い機能をしている。タケは右アタッカーだが、トップやトップ下のような位置にスライドすることもできるし、その流動性こそが現状では最善だ。

 ダビド・シルバは特別な選手だった。たとえば3つの選択肢があるなかで、4つ目を出すことができる。誰も予測しなかったプレーを見せるのは魔法だよ。パウサ(休止)を使えるから、緩急の変化で相手を外せる。トップ下としては、ラ・リーガに同じレベルの選手はそうはいない。ちなみに鎌田大地はそれに近い選手だし、獲得交渉もあったようだが......。

 タケもパウサの感覚は持っているが、彼は昨シーズンも2トップの一角に配されていたように、ゴールに向かうパワーやスピードに最大の特徴がある。周りと連係しながら相手を崩し、得点を狙い、最大限の力が出せる。その点、右サイドから中央に入って周りと連係しながら、ポジションに囚われず、ゴールを狙うほうがベターだ」

 エチャリはそう言ってこう締めくくった。

「焦りは禁物だ。タケの実力は間違いない。ただし、活躍すると、すぐに『スーパースター登場』『ビッグクラブへ移籍?』といろいろ話題になるが、選手は1試合で評価が変わる。じっくりとプレーを重ねることこそ、飛躍につながるはずだ」

 そしてエチャリは、久保の今年の日本代表でのプレーについて言及を始めた。
(つづく)

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ミケル・エチャリ
1946年生まれ。サンセバスチャン出身のスペイン・バスク人指導者。選手としては膝のケガにより27歳で引退し、その後は指導者に転身した。レアル・ソシエダでは20年以上にわたり強化ディレクター、育成ディレクター、セカンドチーム監督などを歴任。エチェベリア、デ・ペドロ、シャビ・アロンソなど有数の選手に影響を与えた。エイバルでは監督を務め、バスク代表監督(FIFA非公認だが、バスク最高の指導者に与えられる栄誉職)も10年以上務めている。また、指導者養成学校の教授も務め、教え子にフアン・マヌエル・リージョ(元ヴィッセル神戸監督)やハゴバ・アラサテ(オサスナ監督)などがいる。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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