久保建英や冨安健洋の試合観戦が楽しくなる レアル・ソシエダとアーセナルの戦術を分析
欧州サッカー日本人所属クラブの楽しみ方 前編
レアル・ソシエダ(スペイン)&アーセナル(イングランド)
欧州サッカーの各クラブで日本人選手が奮闘し、毎週の活躍を楽しみにしているファンも多いだろう。ここではそのなかでもとくに注目のクラブと日本人選手のプレーの見どころを、2回に分けて紹介する。まずはチャンピオンズリーグ(CL)も戦っている、久保建英所属のレアル・ソシエダ(スペイン)と冨安健洋所属のアーセナル(イングランド)だ。
久保建英(左)のレアル・ソシエダと冨安健洋(右)のアーセナル。それぞれ戦い方を解説 photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る【解説動画】
◆レアル・ソシエダ(スペイン)
【攻守ともに洗練された4-3-3】
非常にオーソドックスな4-3-3のチーム。かつてのアヤックス(オランダ)を想起させる。丁寧にパスをつなぐ攻撃が特徴だが、ビルドアップにおける可変はほぼ使っていない。基本的に4-3-3のポジションを崩さずにトライアングルでパスを回していく。
可変がないので、相手にマークされている状態のままボールを動かす。そこで決め手になるのはパスの出し手、受け手の技術であり技術のディテールだ。
ユース出身者が多く、ほぼメンバーも固定されているので呼吸が合っているのは強み。マークされながらも瞬間的に相手を外す「受け」の技術、そのタイミングを逃さず正確に速いパスを送れる出し手側の技術、ともに洗練されている。
とくにMFのトリオを構成するミケル・メリーノ、ブライス・メンデス、マルティン・スビメンディのバランスとパスワークが安定している。
守備も担当レーンを前進するシンプルな機能性。ただし、インサイドハーフが前進した場合にウイングが斜め後方のカバーリングポジションをとる、逆にウイングが出たらインサイドハーフがカバーと、大外とハーフスペースのペアがしっかりと連係。
そのため高い位置からプレッシャーをかけることがスムーズにできていて、ディフェンスラインを高く留めてコンパクトな陣形を維持できている。
弱点は高いラインの裏をとられた場合と、ミドルプレスからローブロックへの移行に多少ばたつきがあることだが、コンパクトでミドルゾーンからは常にボールホルダーにプレッシャーをかけてフリーにしない守備の機能性は高く、攻撃同様に洗練されている。
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プロフィール
西部謙司 (にしべ・けんじ)
1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。