ネイマール、アル・ヒラル移籍の全内幕 バルサ復帰は絶たれ、他に選択肢はなかった (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【欧州復帰を算段しているが...】

 そこにはカタールとのライバル関係もある。サウジアラビアとカタールは犬猿の仲で、かつては国交を断絶していたこともある。カタールが保有するチームであるPSGからネイマールを奪い、自国のクラブに連れてくるという事実が、サウジアラビアにとって大事だったのである。

 ネイマールは、ロサンゼルスに持ちかけたのと同じように、まずは1年、バルセロナにレンタルしてもらおうと考えていたようだ。しかしビッグネームを集め、サウジアラビアプロリーグをサッカーの中心にしたいと考えているサウジアラビアは、「今」ネイマールがほしかったのだ。

 ネイマールの父は、実は本心では息子にPSGに残ってほしいと思っていた。だがそんな彼にアル・ヒラルとザハヴィは「今年来るならこれまでのオファー以上の金を出す」と約束した。ここで総額4億ドル(約580億円)近くと言われるゴージャスな契約が結ばれる。おまけに25部屋がある豪邸も、8台の高級車も、好きな時に使えるプライベートジェットも与えられ、またサウジアラビア国内のレストランなどで飲み食いした金額も、すべてチーム、つまりサウジアラビア政府が払うと言われている。

 アル・ヒラルとネイマールの契約は2年間。そのあと双方合意なら1年間のオプションがつく。ネイマールの頭のなかでは、2025年6月までアル・ヒラルでプレーし、その後はヨーロッパのビッグクラブに戻り、W杯までの1年間を過ごすという算段がされているようだ。だが、そううまくいくとは思えない。

 アメリカに行ったメッシは開幕から6試合連続で9ゴールしているが、誰もそんなことを気にしないし、クリスティアーノ・ロナウドのアル・ナスルの試合をきちんと見た人も少ないだろう。彼らはどんどんサッカーの世界の中心から遠ざかっている。ネイマールも遅かれ早かれそうなりかねない。

 ブラジルの人々は今回のニュースを、かなり残念なものとして受け止めている。ネイマールは好むと好まざるとにかかわらず、ブラジルサッカーの顔だ。それがサウジアラビアでプレーするというのは、ブラジルサッカーの斜陽を物語っている気がしてならないからだ。

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