ネイマール、アル・ヒラル移籍の全内幕 バルサ復帰は絶たれ、他に選択肢はなかった

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

アル・ヒラル(サウジアラビア)に移籍したネイマールphoto by Al Hilal/Abaca/AFLOアル・ヒラル(サウジアラビア)に移籍したネイマールphoto by Al Hilal/Abaca/AFLOこの記事に関連する写真を見る ネイマールがサウジアラビアのアル・ヒラルに移籍した。

 誰もがこのニュースを信じたくない思いだったのではないか。メディカルチェックをしたと言われても、筆者は信じたくなかった。彼は38歳のクリスティアーノ・ロナウドや35歳のカリム・ベンゼマとは違う。まだ31歳で、あと数年はトップレベルのサッカーを続けられるからだ。

 かつてネイマールとともにバルセロナでプレーし、彼のパリ・サンジェルマン(PSG)行きに最後まで反対していたルイス・スアレスは「契約書をこの目で見るまでは信じない」と言った。引退後、辛口コメンテーターとなった元イングランド代表リオ・ファーディナンドは「ネイマールはタオルを投げたも同然だ」と言った。

 それにしても、ネイマールはなぜこんな選択をしたのか。

 世間では、とんでもない額の報酬につられたのだと思われているが、今のネイマールに足りないものは「金」ではない。金ならすでに有り余るほどある。彼に足りないのはタイトルであり、レベルの高いプレーと称賛と拍手だった。

 私はネイマールのことを、彼が17歳の頃から知っている。ネイマールは決して金の亡者ではない。軽率だし、考え足らずのところは多々あるが、愛すべき人物だ。10年も前から財団を作り、ブラジルの貧しい子どもたちを助けていたりもする。

 彼がサウジアラビアに行った理由は――他に選択肢がなかったからだ。

 ネイマールはPSGに移籍してから、チームと蜜月状態にあったことはなかった。1年たっても、2年たっても念願であるチャンピオンズリーグのタイトルは獲れず、エディンソン・カバーニ、レオナルド、トーマス・トゥヘル、キリアン・エムバペ......チームメイトや監督、クラブ幹部と喧嘩を繰り返した。

 フランス語は話せない。パリは寒い。ケガも多く、その憂さを晴らそうとパーティーを開けば糾弾され、チームからブラジル人はどんどん減っていき、気がつけばエムバペ体制になっていた。サポーターから愛されたことはなく、今年の5月にはネイマールの家の前で250人以上のサポーターが「Neymar, casse-toi!(ネイマール、出て行け!)」とコールを行なった。書き連ねたら、何ページあっても足りない。ネイマールはパリで幸せではなかった。

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