エムバペ移籍報道が加熱 移籍金300億円を支払うクラブはあるのか? (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

【移籍を志願したラビオは...】

 アル=ヘライフィー会長自身がエムバペ放出の可能性を認める発言をしたのはそれが初めてのことであり、そこには強い意志が感じられた。

 そういう意味では、その後もクラブのアプローチに対して何のリアクションを起こさなかったエムバペ側に対し、ジャパンツアー直前になってトップチームから外すという冷酷な決断を下したことは、自然の流れだったとも言える。

 そもそも、昨シーズンの最終節でエムバペの契約延長が発表された時、そのユニフォームには「2025」と記されていた。しかし実際には、2024年までの2年契約プラス1年オプションであり、しかもオプションを行使するか否かはエムバペの意思が優先されることも盛り込まれていたことがのちに発覚している。

 当時はクラブの未来をエムバペに託したかのような報道もあったが、もしそうだとしたら、エムバペの年齢を踏まえれば新契約の期間は4、5年であって然るべきで、その事実から推察すれば、当時から両者間で何かしらの密約があったとしても何ら不思議ではない。

 つまり、表向きにはあと1年の契約を残した2024年夏に、移籍金を残してエムバペが出て行くという密約だ。実際、アル=ヘライフィー会長も、エムバペはフリーでは出て行かないと言ったという発言もしている。少なくとも、代理人を挟むことなく、クラブの会長と母親と弁護士だけで交わされた昨夏の不自然な延長契約には、そのプロセスも含め、いまだに多くの謎が残されている。

 いずれにしても、契約上、この問題は7月31日にまでに解決しなければならないとされているため、パリに残ったエムバペと彼のマネジメントチームは、それまでにアル=ヘライフィー会長と"落としどころ"を見つけることになるはずだ。もしその話し合いが物別れに終わってしまえば......。

 思い出されるのは、2019年に同じように契約延長を拒否して移籍を志願していたアドリアン・ラビオが、その制裁としてクラブから飼い殺しに遭ったことだ。クラブのアイコンであり、フランス代表のキャプテンでもあるエムバペに対し、まさかラビオと同じような制裁を加えようとは、にわかに信じがたいことだが、アル=ヘライフィー会長とそのバックにいるカタールは、これまでそのような強硬なやり方を貫いてきたのも事実だ。

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