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「小野伸二を思い出す」 オランダ人に「どハマりした」パリ五輪世代・斉藤光毅は「手に負えない左ウインガー」 (3ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

【監督の言葉で吹っきれた】

 斉藤はいつも、楽しそうにプレーしている。足がつってしまうという課題を抱えていながら、つらいはずの時間帯でも周りが幸せな気分になるような表情でプレスをかける。これには、敵もうんざりするだろう。

 スパルタのオフィシャルフォトグラファー(この人も日本出張時の思い出を語ってくれた)は「見て、見て。これ全部、光毅の写真なの」と言いながら大量の斉藤の写真を見せにきた。近くにいた職員も交え、私たちは「写真のなかの光毅はいつも笑っている」と言って盛り上がった。

 このフォトグラファーにとってお気に入りの写真は、試合が終わってからゴール裏のサポーターと記念撮影するシーンだ。そこには、ファンのために自らセルフィー棒を握る斉藤の姿があった。

 マウリス・スタイン監督も、斉藤のことを常に気にかけている。試合後のインタビューに応えていると、私に「光毅は今からここに来るからな」と声をかけてくれることが頻繁にあった。

 そんなスタイン監督から、斉藤は金言を授かっている。ワールドカップ中断期の個人面談で、斉藤は「もっと結果(ゴール・アシスト)を残さないといけないと思います」と自身の課題をあげた。すると、スタイン監督は「そんなに気負うな」と言って続けた。

「結果ばかりを追ってしまうと、逆に結果がついてこない。まずはチームのために自分のストロングポイントを出し、やるべきことをやってくれれば、私は評価する。そうすれば、自ずと結果はついてくる」

 この言葉で、斉藤の心はラクになったという。それがシーズン後半戦のゴール・アシストにつながった。

 右ウイングのファン・クローイ、ストライカーのトビアス・ラウリツェン、そして左ウイングの斉藤──シーズン後半戦、3トップの並びが完全に定まった。そのなかでフリーロールを任されていたのはファン・クローイだ。「自分もそういう役を果たしたい」と思っていた斉藤は、シーズン終盤になると自由に動く裁量をもらい、攻撃の引き出しを増やしていった。

「自分が思うように動いても、何も言われないようになってきました。試合前には(指示を)いろいろ言われますが、試合が始まってしまうと攻撃陣はなんだかんだ言ってかなり自由。そこは自分にとっていいですね」

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