史上最高の左ウイングは赤の背番号11が似合うあの選手に... 記憶に残る世界の歴代ベスト20 (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Reuters/AFLO

【1位】ライアン・ギグス(ウェールズ)=左利き

マンチェスター・ユナイテッド、ウェールズ代表で活躍したライアン・ギグスマンチェスター・ユナイテッド、ウェールズ代表で活躍したライアン・ギグスこの記事に関連する写真を見る 晩年こそ守備的MFに回ることがあったが、マンチェスター・ユナイテッドの左ウイングとしてほぼ現役生活を貫き通した。最初に見たのは20歳になるかならないかの頃。何より背番号11が似合う選手だった。パッと見が違っていた。切れ味鋭い必殺のドリブルで、目の前の敵を翻弄する。クラブのレジェンド、ジョージ・ベストに通じる彫りの深いそのルックス、危険な香りに包まれたドリブルフォームも圧倒的に格好よかった。

 右ウイングを務めたウクライナ出身のロシア代表アンドレイ・カンチェルスキスが、走力を活かしてライン際を疾走する直線的なドリブラーだったのに対し、ギグスは技巧と直進性の関係が50対50で均衡するバランスに富むドリブラーだった。

 低重心のフォームから腰でボールを押し出すように前進。左足のインサイドとアウトサイド交互に交え、時に右足も駆使しながら、ボールを引きずるように操作する。格闘技で言うところの左半身(ひだりはんみ)の体勢もキツくなく、ボールは常に身体の真ん中付近に置かれているので、進行方向が読みにくいのだ。背筋がピンと伸びていて視野も広い。状況判断も的確で、敵の動きに対する対応が素早いのだ。

 トップスピードに乗ったフォームも美しいが、瞬間、ひらりとかわす身のこなしもまた洒落ていた。ギグスこそが、最盛期のプレーをもう一度見たい選手の筆頭になる。

プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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