史上最高の左ウイングは赤の背番号11が似合うあの選手に... 記憶に残る世界の歴代ベスト20 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Reuters/AFLO

【今日のウイング像を築いた】

 ボールを受けるや、左足を軸にクネクネしたその独得のドリブルを開始。観衆を古きよき時代へとワープさせた。その後方に位置するロベルト・カルロスをはじめ、周囲のブラジル人選手もデニウソンのドリブルにほれぼれするように見入っていた。デニウソンがドリブルを開始すると、あえて、絡もうとしなかった。
 
 1997年コパ・アメリカ、ボリビア大会決勝。会場のラパスは4000メートル近い高地で、ブラジルはその薄い酸素に悩まされ、開催国ボリビア相手に大苦戦を強いられていた。決勝ゴールが生まれたのは後半33分。ハーフウェイラインでボールを受けたロナウドが左前方を行くデニウソンにボールを預け、ボリビアゴール前に疾走する。デニウソンのタメ、切れ味鋭い折り返しも絶品だったが、それを決めたロナウドもすごかった。試合後、記者席に回ってきたMVPの投票に、筆者はロナウドと書き込んだ。しかし周囲をカンニングすればデニウソンだらけだった。

【2位】マルク・オーフェルマルス(オランダ)=右利き

 1994-95シーズン優勝。翌1995-96シーズンは延長PK戦での準優勝だった。CL史上で、最も痛快な勝利を重ねながら優勝したチームと言えば、アヤックスになる。そのなかでも痛快だったのは、右利きの小柄な左ウイング、マルク・オーフェルマルスのウイングプレーだ。

 大男の逆、逆を突き、縦突破を図る姿に、アヤックスサッカーの真髄が投影されていた。ウイングが縦抜けするプレーを「勝負する」と言うが、オーフェルマルスの勝率は断トツに高かった。もちろん勝負なので負けることはある。だが、そのあとのリカバリー能力にも長けていた。奪われてもガッカリせず、すぐに取り返しにいく真面目、勤勉さが光る好選手だった。

 当時のアヤックスでは4-3-3の左ウイングだったが、フース・ヒディンク率いるオランダ代表では4-2-3-1の3の左だった。4-4-2と4-3-3の中間型と言われる4-2-3-1。この4列表記を最初に口にし、好んで使ったのはヒディンクで、筆者には「両ウイングに中盤的な役割を求めた布陣。両ウイングに相手SBの攻め上がりを阻止するディフェンス能力を求めた」と説明した。「オーフェルマルスはその適任者だった」とも語っている。今日のウイング像を築いた選手と言っても過言ではない。

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