マンチェスター・シティがレアルに圧勝した理由 ヴィニシウスを怖がらず貫いた可変システム

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Reuters/AFLO

【レアルが後方待機を決め込む理由】

 しかし、ハーランドのヘディングをクルトワが指先で際どく防いだその2分後、マンチェスター・シティに先制ゴールが生まれる。

 右サイドの深い位置でジョン・ストーンズ、ウォーカー、ケヴィン・デ・ブライネ、ベルナルド・シウバが4角を形成。そのルート上を、サイドと最深部をえぐりながらボールが回ると、最後にクルトワと1対1になったベルナルド・シウバが、左足シュートを確実に流し込んだ。

 この先制点には本来なら決勝ゴールのような意味がある。勝負を決めるような重みを感じるはずだが、その時は、まだ試合はこれから。ドラマは起きそうな気がした。レアル・マドリードがこのまま静かに敗れ去るとは思えずにいた。

 だが、一方的な関係はその後も続く。UEFAのデータによれば、0分から15分までの支配率は79対21、30分まででは76対24の関係に及んだ。

 レアル・マドリードが後方待機を決め込む理由は、先述の成功体験に基づいていると考えられた。結果的には、自らのしぶとさを過信した末の敗戦となるわけだが、レアル・マドリードはその時、エネルギーを全開に、斬るか斬られるかの反撃を開始するのはまだ早いと踏んだものと思われた。

 レアル・マドリードのパスが初めて何本も有機的に繋がったのは、なんと前半31分という遅さだった。ロドリゴがヴィニシウス・ジュニオールに際どいスルーパスを送り、マンチェスター・シティを慌てさせる際どいシーンを作った。33分にもロドリゴのスルーパスにカリム・ベンゼマが抜け出すシーンが生まれる。さらに34分、トニ・クロースがバー直撃のミドルシュートを放つと、試合はこの日一番の盛り上がりとなった。一瞬、オープンな展開になった。これがどちらにどう作用するか。

 幸運の女神が微笑んだのは、レアル・マドリードではなくマンチェスター・シティ側だった。

 前半36分、イルカイ・ギュンドアンは、大外のグリーリッシュからパスを受けると、その内側をスルスルとドリブル。隙を突いてシュートを放った。それはDFエデル・ミリトンの足に当たり阻止されたが、レアル・マドリードにとって不運だったのは、その跳ね返りがエリア内に侵入していたベルナルド・シウバの目の前に向かったことだ。頭で押し込む追加点が生まれた瞬間だった。

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