JベストGK高丘陽平、横浜F・マリノスからMLS挑戦の決断を語る。「迷いもありましたが...、今回の挑戦にかけるべきじゃないかって」 (3ページ目)
【世界基準でのプレーを意識】
結局、GKは指先一本でもシュートを防げるか。それがチームの運命を変える。止められるシュートを止めているだけでは、殻を破れない。
昨シーズン、高丘は湘南ベルマーレ戦で日本代表FW町野修斗のシュートを防いでいる。ショートカウンターからエリア内にフリーで入られてしまい、町野の右足で狙いすましたシュートもコースは完璧に近かった。しかし素早い反応で指先だけでコースを変え、弾き出した。その指先に、世界のGKと平凡なGKの違いがあるのだ。
「いい時は、(相手がどうするかを)感じ取れるようになってきました。自分の間合いに持っていけるんです。でも、よくない時はまだまだあって、そのメッセージを感じ取れず、相手の間合いにされてしまう。だから、たとえ悪かったとしても、最後のところで自分の間合いに修正できるようにならないと、と思っています」
高丘はゴールキーピングを追求し続ける。
そのプラスアルファで、「リベロ」の特性も輝くようになった。バックラインの背後のスペースを完璧にカバーし、相手の攻撃を何度も未然に防御。また、攻撃面でも出色のビルドアップを見せた。あらゆる状況を見極め、高い技術を持って、努力を重ねているからこそ、ハーフライン近くへのパスもつけられる。
特筆すべきは、リベロプレーが失点につながったことがなく、ほぼミスがなかった点だろう。ありあまる足技があると、その高評価に溺れてしまいがちだ。しかし、彼は失点につながる色気を出さない。
「まだまだ課題はあって、たとえばハイボールの対応でのポジショニングや一歩目の出し方とか。(昨年末にはセリエAの)ローマと対戦して、単純な体格とか、キックの重さも体験して、世界基準でプレーすることも意識するようになりました。より高い目標を持って、これからも細部までこだわって、一日一日積み上げていくしかないですね」
圧倒的な守護神としての姿を、高丘は愚直に追い求める。それが海外挑戦という"必然"につながったとも言えるだろう。
これからも、一度として同じではない瞬間に全力をかける。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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