三笘薫をフル出場させることを優先。連続決勝弾を呼び込んだ監督采配とブライトンの戦い方

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Reuters/AFLO

 プレミアリーグ第22節、ブライトンはボーンマスを1-0で下し、自己最高位かつヨーロッパリーグ出場圏をうかがう6位の座をがっちりとキープした。ブライトンのクラブ史を辿れば、まさにミラクルに値するこの快進撃を語る時、三笘薫の存在はいまや欠かせぬものになっている。

 前戦のリバプール戦(FAカップ4回戦)に続き、三笘はこの試合でも決勝弾を叩き出した。時間は後半42分。前戦の一撃が後半のアディショナルタイム(47分)だったので、2試合連続、終盤で劇的なゴールを奪ったことになる。

 その派手な活躍に目を奪われるが、それ以前に最終盤までピッチに立ち続けていることにあらためて驚かされる。三笘のフルタイム出場はこれで公式戦4試合連続だ。カタールW杯明けでは9戦中6戦となる。選手交代枠が5人となったいま、90分間、フルタイム出場するアタッカーは世の中にそう多くない。フルタイム出場には現実的に無理が生じるからだ。

 プレッシングに参加することより、90分間、ピッチに立っていることを1番に求めたくなる選手。わかりやすい例は、アルゼンチン代表としてプレーするリオネル・メッシになるが、ブライトンにおける三笘もそうした特別な選手に見えてきた。

ボーンマス戦の終盤、ヘディングで決勝ゴールを決めた三笘薫(ブライトン)ボーンマス戦の終盤、ヘディングで決勝ゴールを決めた三笘薫(ブライトン)この記事に関連する写真を見る 4-2-3-1の左ウイングが、試合開始直後から相手のディフェンダー(右SB)に、普通にプレスをかけ続ければ、後半なかば過ぎると脚いろは衰える。交代のタイミングを迎える。どうすれば、そうした事態を避けることができるか。三笘を終盤までピッチに立たせておくことができるか。この日のロベルト・デ・ツェルビ監督の采配には、その点に腐心する姿が透けて見えた。

 三笘は前半、大きな活躍はしていない。なによりボールに触れる絶対数が少なかった。左サイドの高い位置で、相手の右SBに1対1を仕掛けるアクションは、せいぜい1、2度に終わった。それは、左サイドでコンビを組む、SBペルビス・エストゥピニャンの位置取りと深く関係していた。

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