三笘薫、劇的決勝弾でリバプール撃破。どのレベルまで「縦突破」を挑むことができるか (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Reuters/AFLO

【武器は「逆を取る力」】

 イングランド代表の右SBが1対1で縦に幾度か突破される姿は、現地の人には衝撃的だったに違いない。リバプールファンのみならず、実際にプレーしたリバプールの選手もさぞショックを受けたはずである。少し誇張すれば、3-0というスコアはその結果だと思う。

 ライン際の攻防には「やられた感」が端的に表れやすい。自軍の頼れるはずのSBが、相手のウイングに完敗する姿は、選手のみならず観衆にも、劣勢のイメージを必要以上に増幅させる。
 
 内に切れ込むプレーより、縦突破を許した場合のほうがダメージは大きい。敵は焦る一方で、味方は勇気づけられる。観衆はワクワクさせられる。

 この日、アレクサンダー・アーノルドは交代でベンチに下がっているが、それは後半14分という早さだった。リバプールが苦戦する様子は、ここに端的に表れていた。

 縦突破とカットイン。難易度が高いのは縦突破だ。縦にかわす技術である。その力が三笘には備わっている。日本代表では右ウイングの伊東純也も縦突破を売りにする選手である。こちらの武器がスピードであるのに対し、三笘の武器は逆を取る力だ。スピードもないわけではないが、フェイントを交えながら、タイミングを外す能力に優れている。

 リバプール戦で、左ウイングで構える三笘にボールが渡る機会は10回を超えていた。そのうち相手SBと1対1の勝負に挑んだのは6回ほどで、縦突破が決まったのは3回。内に切れ込むプレーも3回程度だった。縦か内か。わからないところもアレクサンダー・アーノルドを混乱させた理由だろう。縦があるからカットインも決まる。レスター戦のスーパーゴールも、三笘に縦のイメージが強いために生まれた産物だった。

 対峙するSBのレベルが上がれば、おのずと縦突破が決まる確率は下がる。失敗を恐れればトライする数そのものが減る。それはウインガーとして壁に当たったことを意味する。しかし、少なくともいま現在、三笘にその兆候はない。ノリノリでプレーしている。リバプールといえば、チャンピオンズリーグ(CL)で毎度、決勝トーナメントを戦う欧州の強豪だ。今季もリーグ戦は振るわないものの、CLではベスト16入りをはたしている。つまり、そこで戦う力が三笘にはあると解釈することができる。

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