家本政明が審判目線で感じたカタールW杯の裏メッセージ。「11人対11人でなくなるとフットボールが変わってしまう」
元審判・家本政明が語るカタールW杯 前編
半自動オフサイドテクノロジーの導入や、W杯として2大会目のVAR導入など、カタールW杯はレフェリング面でも従来からの変化があった。Jリーグで最多試合数を担当し、2021シーズンいっぱいでレフェリーを引退した家本政明さんは、今大会をどう感じたか。審判目線から語ってもらった。
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【半自動オフサイド、VAR2大会目...。変化のあった大会】
カタールW杯は、決勝戦のアルゼンチン対フランスが歴史に残るすばらしい試合で締めくくられ、日本代表としてもドイツ、スペインというW杯優勝国に勝利してのグループ首位通過。いちフットボールファンとして非常に楽しめて、心に残る大会だったと思います。
レフェリング的にも半自動オフサイドテクノロジーの導入やVARが導入されて2大会目であることなど、前回のロシアW杯と比べてさまざまな変化があったと思います。そのなかで私がレフェリー視点で感じたことは、大きく3つあります。
1つ目は基本に忠実であったこと。今大会、グループリーグで追加時間がかなり厳密に取られていました。これまでの試合ではだいたい3分、長くても5分程度が追加時間の慣習だったと思いますが、7分や10分という追加時間が散見されました。
競技規則には、選手の負傷や交代で経過したところを主審の裁量によって時間を追加して、スローインやゴールキック、コーナーキックはあまりにも時間がかかった場合は別ですが、基本的には考慮しないと謳われています。
これは、FIFAのマーケティングサイドの考え方もあると思います。W杯という4年に一度の大会で、感動や喜びの機会損失をできるだけ抑えたいと。そういうオペレーションをする責任があるなかで、競技規則に則ってより厳密に取っていったのだと思います。ただ、決勝トーナメントになるとやや緩くなった印象がありました。
それから、W杯にしては珍しくスローインのポイントにすごく細かかった印象があります。やたらと笛を吹いてポイントを直させていましたね。競技規則的には正しいんですが、日本以外であれだけ細かく丁寧に笛を吹くのは見たことがなかったです。
フットボールは曖昧なスポーツだと思うんですけど、そこから少しルーズさを取って、魅力と価値を高めようという考え方や様子が、今回垣間見えたと思います。
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