カタールW杯開幕戦で開催国が見せた経験値の低さ。後半開始とともに観客は家路についた (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by JMPA

経験を補えなかったスペイン人監督

 淡泊な気質と言えばそれまでだが、そこにカタールの弱さを見た気がした。自国開催のW杯を心の底から楽しみにしてきたカタール人は、どれほどいただろうか。開幕戦のスタンド風景を見ると懐疑的にならざるを得ない。ピッチに立つカタール代表の選手たちが哀れに見えて仕方なかった。

 カタールは国としての経験値の乏しさを露呈させたという印象だ。サッカーそのものの話に転じれば、これが初めてのW杯出場だ。「予選を突破したことがない国が開催国になった試しはない」とは、日本が2002年日韓共催W杯を前に抱えることになった呪縛だが、いまのカタールにはまさにその弊害を見る気がする。

 何より試合の入り方を間違えた。守備的すぎたのだ。4-4-2のエクアドルに対して5バックで守り、立ち上がりから主導権を握られたことが、自信を失う結果になった。開始3分、エクアドルのゴールがVARで取り消しになったシーンがあったが、その際に見せたカタールGKサード・アルシーブの不安定な動きに、それは端的に表れていた。

 ボールを奪う位置が低いので、攻撃に出てもすぐに奪われる。5-3-2という布陣が示すとおり、陣形が先細りになっているので、パスコースが少ない。カウンターに適したサッカーだが、選手たちは、にもかかわらずボールをつなごうとする。

 前半31分の2失点目のシーンは、つなぎの主役、守備的MFのカリム・ブディアフが途中でパスを引っかけられたことが原因だった。選手個々の力量はそこまで低くはないだけに惜しい気がした。

 国として、選手としての経験値が足りなければ、それを補うのは監督になる。しかし監督のフェリックス・サンチェスも、その渦の中に飲み込まれてしまったという感じだ。バルセロナの下部組織で指導経験のあるスペイン人監督ながら、W杯の開幕戦で、格上と対戦する小国を指揮する監督としては物足りなさを感じた。国際経験の少ない選手を前向きにリードする力に欠けた。せめて2-0とリードされた後半は5-3-2をやめ、もっと攻撃的なサッカーで反撃を試みて欲しかった。

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