カタールW杯開幕戦で開催国が見せた経験値の低さ。後半開始とともに観客は家路についた

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by JMPA

 2019年に行なわれたアジアカップ決勝で対戦した時のカタールは、もう一度戦っても勝てそうもないと思わせる強そうなサッカーをしていた。日本が喫した1-3という敗戦は順当な結果に見えた。2022年自国開催のW杯に向け、視界良好であることを、アジアカップ優勝を通してアピールすることに成功した。

 抽選の結果、オランダ、セネガル、エクアドルと同じ組(グループA)で戦うことになった同国に、大きな可能性を感じたものだ。オランダはともかく、エクアドル、セネガルと2位争いを展開できるのではないか。アジア地区のサッカー向上のためにも、そうあることを願っていた。

 会場のアルベイト・スタジアムに「この日の観客数は6万7372人でした」というアナウンスがされたのは後半34分だった。しかしその時、スタジアムに残っていた観衆はその半分程度だった。多くが家路を急いだからに他ならない。その動きはすでに後半の頭から顕著になっていた。

 カタールW杯開幕戦。エクアドルは前半16分、エネル・バレンシアのPKで先制すると、前半31分には同じくバレンシアが、右からの折り返しをヘディングで決め、前半を2-0で折り返した。

カタールとの開幕戦で2ゴールを決めたエネル・バレンシア(エクアドル)カタールとの開幕戦で2ゴールを決めたエネル・バレンシア(エクアドル)この記事に関連する写真を見る 開催国カタールにとって、この上なく好ましからざる展開となったが、まだ2点差だ。後半の早い段階で追いつけば同点、逆転の目がないわけではない。少なくとも、筆者はそうした展開を願っていた。ところがあろうことか、開催国の観衆は、可能性はないと諦めたのか、帰りの渋滞を嫌ったのか、スタンドから次々と去って行った。

 海外サッカー"あるある"のひとコマではある。敗戦を最後まで見届けることなくスタンドをあとにする観客のなんと多いことか。日本人が持ち合わせていない気質の代表的なものだと筆者は見るが、前半を0-2で折り返しただけで帰り始める観衆を見たのは、長い観戦史上でも初めてのことである。それがW杯の開幕戦で起きてしまった。

 ゴール裏の一角には、カタールに集団的な応援をする奇異な塊があった。この日のために応援の練習を積み重ねてきたという背景が容易に推察できる、試合の流れとは関係なく声を出し続ける、少しばかり困った感じの一団だ。だが彼らでさえ、後半に入ると、数を半分に減らしたのである。雇われて応援しにきたものの、前後半、任務を全うできた人は半分しかいなかった。

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