風間八宏「久々に本当の天才が出てきた」。バルセロナ・ペドリのすごさは「眼の特殊能力にある」 (2ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

まだ目の前の相手だけと勝負している

 ペドリが生まれたのは、アフリカ大陸の西にあるカナリア諸島のテネリフェ島。幼少期から特別な才能を誇っていたペドリは、後にグラン・カナリア島のラス・パルマスのカンテラ(育成組織)に入団。16歳でプロ契約をかわし、即トップチームに抜てきされた。

 ペドリのプレーの原点は、やはりカナリア諸島で過ごした少年時代にあるのだろうか。

「たぶん、小さい頃から相手に参った、と言わせたい選手だったのでしょう(笑)。

 ペドリのゴールシーンを見ても、次々と相手の逆を突き、最後まで揺さぶり倒して、さらに最後もGKの逆をとってネットを揺らします。普通の選手なら、ゴール前でチャンスがあれば、まずはシュートを狙ってみるものですが、ペドリはそうしません。

 様々な情報が眼から入ってくるので、相手の動きを読みきって、シュートコースがなければ無理して狙わず、相手を揺さぶりながらシュートコースを作って確実に射止めることができる。本当のテクニシャンであり、天才だと思います」

 そんな特別な才能の持ち主であるペドリはまだ19歳だ。果たして、これからどのような選手になっていくのか。風間氏がその無限の可能性を分析してくれた。

「たとえば、同じバルセロナにはガビという優秀な若手がいますが、わかりやすく言えば、ガビは育てられた選手。しかし、ペドリは持って生まれた才能がベースになっている選手なので、これからもっともっと成長していくはずです。

 タイプは異なりますが、デビューしたばかりの頃のメッシもそうでした。当初は目の前の相手を次々とかわすドリブルと決定力が武器でしたが、20代になってからは技術の正確性が無比になり、それによって試合全体を動かせる選手に成長していきました。つまり、眼から技術の正確性というプロセスによって、誰も到達できないレベルの選手になった。

 ペドリも同じ可能性を秘めていると思います。現在はまだ目の前の相手だけと勝負しているので、局地的に相手を動かすことにとどまっていますが、もっと技術が正確になって、見る範囲も広くなっていけば、当然のように、バルセロナでも代表でも試合全体を動かせる中心選手になっていくはずです。

 しかも、バルセロナの監督はシャビですから楽しみです。シャビも同じように眼の能力が傑出した天才MFだったので、ペドリがどのようなタイプか十分に理解しているはず。最近はシャビやイニエスタのようなスペイン人選手がいなくなったと思っていましたが、久しぶりに指導しても育てられない選手が出てきたと感じます。

 確かに現段階では未完成かもしれませんが、将来が約束された数少ない選手ですね。この時代に、見て楽しいと思わせてくれる選手は貴重です」

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