旗手怜央が初めて迎えた海外プレシーズン。意識して取り組んだプレーで「自分にボールが集まってくるようになった」 (2ページ目)

  • text by Harada Daisuke
  • photo by Getty Images

「ボールを止める位置」と「ターン」

 かく言う自分は、プレシーズン初戦のSCウィンナー・ヴィクトリア戦、続くSKラピード・ウィーン戦に先発出場し、初戦ではゴールを決めることもできた。だが、その後は体調を崩してしまい、チームがオーストリアから移動するタイミングで、ひと足先にグラスゴーへ帰還することになった。

 とはいえ、戻ってからはすぐにトレーニングを再開した。体調的には万全とは言えなかったが、チームのトレーナーと一緒に、試合を意識して走るようにしていた。

 その結果、7月20日に行なわれたレギア・ワルシャワ戦に間に合うと、20分には先制点を決めることもできた。結果を残していただけに、好調と見てくれた人もいたかもしれない。だけど、あの時は前半45分間プレーしただけでも息が上がり、ゼーハー、ゼーハーしていた。

 不測の事態が起きたこともあって、前置きが長くなってしまったけど、プレシーズンで意識して取り組んだのが、「ボールを止める位置」と「ターン」だった。

 昨冬、セルティックに加入した自分は、チームに合流してすぐにリーグ戦を戦った。当時は環境に慣れるのに精一杯なのもあり、改めて自分の「間合い」とヨーロッパにおける自分がプレーできる「空間」を把握しておきたかったのだ。

 どのくらいの位置ならば、(相手に奪われずに)ボールを止めることができるか。

 どのくらいの(相手との)距離感ならばターンして前を向くことができるか。

 2列目でプレーする自分は、ゴールに対して背を向けてパスを受ける機会や場面も多く、再確認しておく必要があった。

 これまで年代別代表などでも、ヨーロッパや南米といった、いわゆる海外の選手たちと試合をする機会はあった。だけど、単発や短期間での経験だったため、距離感やスピード感を知ることはできても、そこに順応する術(すべ)を身体に染み込ませる、感覚として植えつけるまでには至っていなかった。時間が経てば、その間合いや速さを忘れ、どうしても現状に慣れてしまうところがあった。

 フレンドリーマッチを重ねていくなか、個人的に試行錯誤していくと、その距離感とスピード感をつかめるようになった。これくらいのスペースがあれば、狭くても前を向ける。この位置取りならば、相手に接触されずにターンできる、と......。

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