カタールW杯ドイツ戦の最大の敵、キミッヒの特長を風間八宏が解説。森保ジャパンが彼を抑えるにはどうすればいい? (2ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

パスを点で合わせられる選手

「キミッヒの最大の武器は、パスの精度でしょう。とくに中距離、長距離のパス精度はピンポイントそのもので、あっという間に局面を変えることができます。前回に守田英正の話をさせてもらったなかで、"丸"と"点"という表現をさせてもらいましたが、キミッヒはパスを"点"で合わせられる。その能力には特別なものがあります。

 とくにハンス=ディーター・フリック監督のドイツ代表は、ピッチの横幅をしっかりとるサッカーなので、キミッヒの持ち味が発揮されやすい。しかも左右両足から高精度のパスが出せるうえ、球種も多いので、中盤の真ん中にいる彼にボールを渡せば、左右中央のどこからでも攻めることができます。そのパスを受ける選手の能力も高いですしね。

 彼が現在のドイツ代表の中心になれる理由は、そこにあると思います」

 キミッヒの特長を解説してくれた風間氏だが、ひとつ気になることがあったという。それは、ユリアン・ナーゲルスマン監督が率いるようになってからの昨シーズンのバイエルンでは、キミッヒの持ち味があまり発揮されなかった点だった。

「キミッヒは、どちらかと言えば"横"を意識してプレーをしていました。だから、距離と時間をしっかり確保するフリック監督のサッカーには適していましたが、縦に速いサッカーをするチームのなかに入ると、その時間の速さに後れをとってしまう傾向が出た。そこが、昨年のバイエルンで、以前のような力を発揮できていなかった原因のひとつだと思います。

 昨シーズンはチームとしてそこに限界を露呈していまい、結局最後はバイエルンも横に広いサッカーになってしまいました。もちろん、これはキミッヒだけの問題ではありませんが、そうなってしまった要因のひとつにはなっていたと思います。

 現在のトップレベルのサッカーで要求されているのは、時間と場所です。レベルが高くなればなるほど、チームとしての時間は速くなり、場所(距離と幅)も狭くなる。その限られた時間と場所のなかで、何を見つけ、どれだけ速く正確なプレーをできるかが、とても大事になってきます」

 しかし、そんなキミッヒも、新シーズンは縦に速いサッカーに順応してきていると風間氏は言う。さすが、欧州トップクラブのレギュラーを務め続けている選手ということか。

「今シーズンのここまでの戦いを見ると、キミッヒはバイエルンの速さを生み出す起点になっています。縦に速いサッカーの時間にも、彼の技術が生きてきた。彼の正確な技術によって時間を自由に扱っており、まさにゲームを作る選手になっています。ますます目が離せない重要な選手だと言えます」

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