久保建英、ダビド・シルバの控えからスタート。デビュー戦は「好プレーが目立つ」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFLO

GKとの1対1を決めていれば...

 58分、左に回った久保はマークに来た板倉滉を巧みに外し、エリア内に絶好のパスを供給している。得点には至らなかったが、このワンプレーだけでセンスは伝わっただろう。これが波状攻撃の呼水になった。ゴール前で当たったボールが浮き上がったところを、カリカブルが決めているのだ。

 若い選手が多いなか、久保は時間を重ねるごとにプレーをアジャストさせていった。ギャップの間に入ると、心地よくボールを受けられる。小気味よく短いパスをつなぐ輪のひとりとして、味方のシュートをアシストもした。マジョルカ、ヘタフェでは、チームはあくまでも守備ありきで、攻撃に手数がかけられず、攻撃を行なうためのパス精度も低かったが、レアル・ソシエダでは水を得た魚といったところか。

 久保は今後、評価を積み重ねることが大事になるだろう。たとえば、味方センターバックからの縦パスに対し、久保が背後から相手に狙われながらも、くるりとトラップをずらすだけで入れ替わった瞬間があった。こうしたプレーは信用度を高める。その証拠に、その直後は久保にボールが集まりかけていた。しかし、再びボールを受けようとして相手のディフェンスに奪われ、大きなうねりはできなかった。久保自身もこうした些細なミスが自分の評価を下げることは承知しているのだろう。すぐに相手にチャージし、ファウルの判定を受けながらも、プレーを断ち切った。

 もしこれで失点でもしていれば著しく評価を下げ、メディアからも叩かれる。サッカーは紙一重だ。

 後半45分間プレーした久保は、守備のタスクもこなしていた。プレッシングでは、ドイツ代表MFフロリアン・ノイハウスを徹底マーク。一度はうしろから勢い余った形で接触し、敵の怒りを買うほど激しかった。ケガをさせるのはNGだが、強度は必要とされるだけに、及第点だったと言えるだろう。

 しかしながら、トップ下というポジションは攻撃で勝利を決定づけるプレーが求められる。その点、味方がつないだマイナスのパスをエリア内で受け、GKと1対1になったチャンスを決めないと、評価は上げられない。久保はいいタイミングで突っ込み、ドリブルで抜こうとしたが、スイス代表の名手ヤン・ゾマーにコースどりを読まれていた。

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