ロナウドが準決勝前に髪型を変えた本当の理由とは? 今、明かされる2002年W杯優勝、ブラジル代表秘話 (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

ロナウジーニョのゴールの真相

「リバ、ここにたまっている怒りと悲しみを彼ら(マスコミ)に向かって吐き出しなさい。君は世界一だ。ブラジルは君にかかっている」

 この試合、ブラジルはイングランドに先制を許したが、前半のアディショナルタイムにまさにそのリバウドがゴールを決め、ブラジルは同点でハーフタイムに入ることができた。後半に入ってロナウジーニョが決めた見事なゴールは、クロスだったのか、シュートだったのか、長く論議されていたが、私はロナウジーニョ本人から真相を聞いている。

「あれはシュートだよ、GKの(デビッド・)シーマンを驚かしてやりたかったんだ」

 試合の後、私は笛を吹いたメキシコ人審判と食事をする機会があったが、彼もこのゴールを絶賛していた。

「ゴールにボールが入った時、私は自分の目を疑ったよ。まさかあんな曲線を描くとは。人生でこれほど美しいシュートを見たことはなかった」

 こうしてブラジルは準決勝へと駒を進めた。この頃になると、ブラジル本国もこのセレソンを認めるようになり、試合は全国の映画館でも中継された。ただ困ったことに、キックオフの時間はブラジルの朝の3時だったり8時だったりしたため、試合のある日は誰も仕事には行かなかった。

 準決勝のトルコ戦の前、ロナウドがとんでもない髪形になったのを皆さんは覚えているだろうか。ブラジルでは有名な漫画の主人公「カスカオ(大きなゴミの意味)」のものと似ていたため、このヘアスタイルは「カスカオ」と呼ばれた。チームのみんなが大反対したのだが、ロナウドは強行した。

 しかし、それは決してただの悪ふざけではなく、大きな意味があった。ロナウドはそれまで好調だったが、彼が膝に爆弾を抱えているのを誰も忘れてはいなかった。テレビや新聞は、ロナウドといえばケガの話ばかりをした。

「僕は人々の注意をケガから引き離したかった。だからあんなヘンな髪型にしたんだよ。実際、その後はみんな僕の髪型のことばかりを話題にするようになって、おかげで僕はリラックスしてプレーができるようになったんだ」

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