柴崎岳の今季をどう評価するか。スペイン2部に定着、直近の試合ではプレーに明暗

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

「ガク(柴崎岳)、日本記録にあと一歩」

 スペイン大手スポーツ紙『アス』はそんな見出しで、レガネス対エイバル戦のプレビュー記事のひとつを掲載していた。大きく取り立てるほどの日本記録ではない。柴崎岳のスペイン2部以下での試合出場数が「指宿洋史の最多記録105試合に、あと2試合」という内容だった。指宿は大半が3部以下での出場であり(2部は6試合)、記録としてはなんとも微妙なものと言える。日本人のスペイン2部での試合出場数は、かつてヌマンシアなどでプレーした福田健二の71試合が最多だったが、柴崎は今季開幕時点ですでに1試合越えていた。

 ひとつ言えるのは、スペイン2部という決して簡単ではない"戦場"に、柴崎は日本人として誰よりも定着できたという事実だろう。

 デビューシーズン、2部テネリフェではヘタフェへの「個人昇格」を勝ち取った。1部では厳しいシーズンを送り、ヘタフェを2シーズンで退団。その後は2部デポルティーボ・ラ・コルーニャへ移籍するが、監督交代が相次いで彼自身も定位置を失い、チームは3部へ降格した。昨シーズンは2部レガネスに拾われる形で昇格を争うも、3位で失敗。今シーズンは開幕以来の低迷で再び昇格は逃したが、監督交代後も試合出場は続けていた。

今季はここまで3ゴールをあげている柴崎岳(レガネス)今季はここまで3ゴールをあげている柴崎岳(レガネス)この記事に関連する写真を見る すでに6シーズン目になる柴崎のスペイン挑戦は、総括すると決して悪いものではない。しかし直近、昇格が有力なエイバル戦、柴崎の明暗が出た。

 本拠地での格上エイバル戦、柴崎は4-2-3-1のダブルボランチの一角でプレーしている。序盤、上位相手だけに押され気味だったところ、プレーを切るためにクリアのようなキックを蹴り、縦パスに厳しく体を寄せた。戦う意識は高かった。持ち前の縦パスのクオリティは高かったし、トップ下に入ってのフリックなど、うまさを見せている。

 ただ、チームが受け身になると、どうしても柴崎本人の弱さも出た。

 オウンゴールで先制点を失った後、前半28分だった。左サイドを呆気なく破られると、エリア内で柴崎は敵FWのマークについていた。しかし、一瞬の動きでニアに入られてしまい、折り返しをゴールに蹴り込まれてしまった。単純に、マーキングの強度が低かった。

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