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鎌田大地、小野伸二以来の高みへ。EL準決勝で光ったインテリジェンス (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFLO

相手の急所を突いた1本のパス

 あるいは"頑張ってない"ようにも映るかもしれない。しかし、トップレベルにおいては、インテンシティが試合を左右するのではなく、インテリジェンスこそが試合を決める。卓抜とした技術とタイミングを選択する知性がモノを言うのだ。

 その証左となるのが、18分のプレーだった。

 鎌田は自軍バックラインに近づくと、左サイドでボールを受ける。何気ない動きだったが、前がかりだった相手が気を抜いた一瞬を見逃さなかった。前線で味方と交差しながら裏を走ったノルウェー代表FWイェンス・ハウゲへ、右足で絶妙な縦パスを出す。前に入ったハウゲが相手DFと交錯してもつれ、ゴール前でファウルを受ける。さらにVAR判定で「決定機阻止」となってレッドカードが出た。

 鎌田はたった1本のパスで相手を10人にしたと言える。これは1点を奪ったに等しい貢献だった。過熱しつつあった試合の流れを読みながら、急所を突いた。

 すると25分、フランクフルトは数的不利でポジション的な不具合も出ていたウェストハムに対し、完全に右サイドを破ってコロンビア代表ラファエル・ボレが先制点を決めている。

 鎌田はこの日も、左サイドでセルビア代表MFフィリップ・コスティッチとの連係のよさが光った。時間とスペースをかみ合わせることで優位性を作っていた。後半、鎌田が左を一本のスルーパスで破ってコスティッチに通した場面があったが、その意外性は出色だった。わずかに球足が長く、ゴールラインを割ったが、ゴールの匂いが強くした。

 鎌田のパスがすべて有効だったわけではないが、たとえ合わなくても、絶対的な自信でパスを出し続けていた。そもそも、ハイレベルの試合ではギリギリの間合いで勝負が決まる。それを繰り返すことで、1点を獲れるか獲れないか。

 終盤には鎌田はカウンターからボールを持ち上がり、絶妙のタイミングでコスティッチに流し入れている。折り返したボールを交代出場したポルトガル代表FWゴンサロ・パシエンシアが左足ボレーで合わせた。シュートは外れたが、とどめになっていてもおかしくはなかった。

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