鎌田大地、小野伸二以来の高みへ。EL準決勝で光ったインテリジェンス

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFLO

「自分がこのチームを引っ張っていきますから」

 サガン鳥栖時代(2015年から17年6月まで在籍)、鎌田大地(25歳、フランクフルト)はプロ2年目にして、そう言ってはばからなかったという。20歳になるかならないかの選手としては、かなりの強気だろう。当時の鳥栖にはエースと言われる選手がいたし、キャリアのあるベテランもいたが、不遜なほどの自信と言える。自分が行くべき道のずっと先を見つめていたのだろう。

 鎌田の欧州での進撃は、必然なのかもしれない。

 5月5日、鎌田が所属するフランクフルトは、ヨーロッパリーグ準決勝でイングランドのウェストハムを2試合トータルスコア3-1で下し、決勝に進出している。すでにひとつの快挙と言える。2001-02シーズン、前身のUEFAカップでフェイエノールトの小野伸二が優勝を経験しているが、それ以来となる欧州カップ戦「日本人選手戴冠」へあと一歩だ。

ヨーロッパリーグ準決勝ウェストハム戦にフル出場、勝利に貢献した鎌田大地(フランクフルト)ヨーロッパリーグ準決勝ウェストハム戦にフル出場、勝利に貢献した鎌田大地(フランクフルト)この記事に関連する写真を見る 今シーズン、鎌田は3-4-2-1のシャドーの一角としてプレーしている。ヨーロッパリーグでは合計5得点を挙げているだけでなく、準々決勝FCバルセロナ戦のアシストのようなプレーで攻撃を牽引。ヨーロッパリーグでは2019-20シーズンも計6得点しているが、最近は風格すら漂いつつある。

 ウェストハムとの第2戦、試合展開としてはじりじりとした立ち上がりだった。フランクフルトは1-2と敵地で勝利して本拠地に戻ってきただけに「引き分けでもOK」という状況で、やや構えながら入ったと言える。相手の攻撃をいなしながら、攻め手を見つける戦い方はバルサ戦でも功を奏しており、簡単には崩れない腰の強さがあるチームだ。

 両チームの選手が肉弾戦を挑み、激しいプレーが増えていた。ウェストハムは無得点では敗退が決まるため、際どい勝負を挑んできた。序盤には、フランクフルトのオーストリア代表DFマルティン・ヒンターエッガーが相手に後ろから押され、負傷交代を余儀なくされる場面もあった。

 そんななかで、鎌田だけは飄々(ひょうひょう)とプレーしていた。

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