堂安律のパフォーマンスが極上すぎる。日本人初のKNVBカップ優勝にオランダメディアも「水を得た魚のよう」と絶賛 (2ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

堂安が攻守で魅せた29分間

 アヤックスは後半11分にMFデイヴィ・クラーセンのゴールで2−2に追いついたかと思われたが、ポストプレーヤーがかかとひとつ分だけオフサイドの位置にいて、前半と同様に取り消し。落ち込むアヤックスとは対照的に、疲労困憊だったはずのPSVはエネルギーをどんどん増していった。

 レスター戦では、左SBフィリップ・マックスがスタミナを切らして後半29分でピッチを去った。CBのジョーダン・テゼは相手ストライカーの独走シュートに追いつきタックルした際に足をつった。しかし、『KNVBカップ決勝戦』『PSV対アヤックス』というパワーワードは、彼らにデータでは説明のつかぬ力を与えたのだろう。

 終盤の締めくくりも含めて、PSVがしっかりマネージして勝ちきった一戦だった。そして、途中交代出場の堂安律がチームにエキストラな価値をもたらした決勝戦でもあった。

 堂安が決勝戦のピッチに立ったのは、PSVが1点をリードした後半23分のこと。

 右サイドハーフを務めた堂安は、アヤックスの頭脳役である左SBデイリー・ブリントの存在を消しつつ、チームが守勢に回った際には最終ラインまで下がって相手エースのドゥシャン・タディッチをマークするタスクがあった。そのうえでキープ、ドリブル、キラーパスを使い分け、あわよくばダメ押しのゴールを奪う、チャンスに絡むことを虎視眈々と狙っていた。

 堂安がこの29分間(アディショナルタイム7分間を含む)で示したパフォーマンスは、まさに極上と表現していいほどのものだった。

 ブリントやタディッチを自由にさせることなく、何度もボールを奪い、右WGステフェン・ベルフハウスのクロスもブロック。攻撃面でも、快速FWブルマとホットラインを形成し、スルーパスを何本も通した。そのうち2本は完璧なパスで、ブルマがシュートを外すたびに堂安は本当に悔しがっていた。

 2試合続けて先発して疲れている選手より、俺が走る----。そんな堂安の気持ちが観客席に伝わってきた。オランダリーグでは記憶にないほどの研ぎ澄まされた集中力で、この29分間にすべてを出し切った堂安の高パフォーマンスだった。

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