旗手怜央、初の海外組として参加した日本代表戦の大変さを振り返る。「ボールが二重に見えた」 (3ページ目)

  • text by Harada Daisuke
  • photo by Sano Miki

戻ってきてのレンジャーズ戦が自信に

 一方で、自分自身でも初めてと言えるくらい、精神的にも肉体的にも疲労を感じている。グラスゴーに来て3カ月。新しい環境に慣れようと、サッカーも、生活も試行錯誤してきた。日本にいた時ならば、さまざまな方法でリフレッシュしたり、気分転換ができていた。しかし、連戦を戦うなかでは、なかなかその手段を見つけられずにいた。

 例えば、飛び出したいタイミングで、そこに行けなかったり、チームのバランスを考えて攻撃参加をあえて自重した時には、自分自身でも疲れを認めざるを得なかった。

 加えて日本代表の活動ではオーストラリア、日本、そしてスコットランドと、短期間での長距離移動があった。初めて海外組と呼ばれる立場になり、移動によるコンディションの調整、維持、そして活動を終えてから再び所属チームで結果を残すことの大変さに直面した。

 今回、初めて日本代表のオフィシャルスーツを採寸してもらい着用させてもらった。その話題になった時、キャプテンの(吉田)麻也さんが、こう言っていた。

「代表のスーツを作ってもらうの、もう何回目になるかな」

 その時は何気なく聞いていたが、セルティックに戻って、言葉の重みを感じた。あの人はもう何年もずっと、この工程を繰り返し、戦い続けているんだと。

 代表の活動で自チームを離れれば、その間にポジションを失う可能性もある。セルティックに戻った初日には、ボールが二重に見える瞬間があり、明らかな時差ぼけも感じた。ヨーロッパで戦うには、そうしたコンディション調整や所属チームでのポジション争いを勝ち抜いていくタフさが求められる。

 それを身に染みて感じていただけに、レンジャーズ戦に先発出場できたことが大きく、そして途轍もない自信になった。

 だから―― 。レンジャーズ戦の同点ゴールのきっかけを、自分が作れたのが大きかった。開始早々の3分に先制された前半7分だった。自分が打ったミドルシュートをGKがはじいたところをトム・ロギッチが決めて、チームは同点に追いついた。43分に追加点を挙げて2-1で勝利し、首位を守るとともに連勝を伸ばすことができた。

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