ファン・ハール断言。オランダ伝統の4−3−3で勝つのは「難しい」。がん闘病中の名将はカタールW杯で有終の美を飾れるか (2ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

オランダを凌駕したドイツ

 デンマーク戦は楽しい夜になった。前半はメンフィス・デパイ(バルセロナ)&ステーフェン・ベルフワイン(トッテナム・ホットスパー)の2トップとステフェン・ベルフハウス(アヤックス)の1シャドーがスイングし、一方的な内容で3−1にしてハーフタイムを迎えた。

 後半になると、デンマークはMFクリスティアン・エリクセンを投入。EURO2020のピッチ上で心臓発作を起こして倒れ、世界中のサッカーファンが心配したが、代表復帰戦となったオランダ戦の後半開始早々に鮮やかなゴールを決めて、古巣アヤックス(ユース育ちで2010年から2013年までトップチームでプレー)のヨハン・クライフ・アレナに集まったファンから祝福の拍手を受けた。

 デンマークを率いるカスパー・ヒュルマンド監督によると、「本当はクリスティアン(エリクセン)を、もっと遅い時間から使いたかったが、あまりに前半の内容が悪かったことと、チームにケガ人が出てしまったことから予定を早めた」のだという。

 うまく賢いエリクセンの動きにオランダはついていけないことが多々あり、急造システムの連係不足を露呈した。こうして後半はオープンな打ち合いになり、両国ともに1点を取ってオランダが4−2の勝利を収めた。

 次なるドイツ戦は3月29日。中2日の親善試合という条件にもかかわらず、ファン・ハール監督はデンマーク戦からふたりしか先発メンバーを変えなかった。現時点のベストメンバーを固めて3−4−1−2を速習させたい----というファン・ハールの思いがこもった起用法だった。

 ドイツはケガ人が多く、ベストメンバーが組めないという事情があった。だが、キックオフから60分あまりはオランダを凌駕した。

 ドイツのシステムは4−2−3−1。2列目の3人(トーマス・ミュラー、カイ・ハフェルツ、レロイ・サネ)とFWティモ・ヴェルナーの4人がポジションチェンジを繰り返してオランダ守備陣に息つく暇を与えず、MFイルカイ・ギュンドアンとコンビを組んだ19歳の新鋭ジャマル・ムシアラの後方支援がアクセントとなり、オランダにマークの的を絞らせなかった。それでも前半、ドイツがあげたゴールはアディショナルタイムにミュラーが決めた1点だけだった。

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