英雄シェフチェンコが世界へメッセージ。「ウクライナ人であることを誇りに思う」

  • パオロ・フォルコリン●文 text by Paolo Forcolin
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa akiko

 戦争を止めようと、誰もが自分のできることを探し、努力という名の小さなレンガを持ち寄り、平和という壁を作ろうとしている。それは最も有名なウクライナのサッカー選手も同じだ。2004年のバロンドール、ディナモ・キエフ、ミラン、チェルシーで活躍したアンドリー・シェフチェンコ。彼と妻と4人の子供たちは現在ロンドンに住んでいて無事だったが、彼の母、姉、叔母、いとこたちが今もキエフに残っている。今まさに包囲されているウクライナの首都だ。

「彼らはキエフを捨てたくはないと言っている」

 イタリア国営放送RAIのインタビューでシェヴァ(シェフチェンコの愛称)は涙ながらに現状を語った。

「状況はかなり悪化しているが、それでも彼らは残っている。母は空港のそばに住んでいるので、爆弾が近くに落ち続けているという。叔母は4日間、ずっと地下シェルターにいたが、いとこの説得でやっと母の家に行くことを承知した。ほぼ20分おきに私は彼らに電話しているが、とにかくそれでも不安は収まらない。毎回、呼び出し音が鳴っている間、電話に出ないのではないかと恐怖にかられる。ロシアが最初に攻撃したキエフの4地区のうちのひとつは、かつて私が住んでいたオボロンだった」

ミラノダービーの試合前、スクリーンに登場したアンドリー・シェフチェンコ photo by Getty Imagesミラノダービーの試合前、スクリーンに登場したアンドリー・シェフチェンコ photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る 元サッカー界のスター選手であり、現指導者のシェフチェンコに今できることは何か。そのことについて、彼ははっきりとした使命を意識しているようだ。

「私はセルゲイ・ブブカ(1988年ソウルオリンピックで金メダルを獲った棒高跳びの選手)とクリチコ兄弟(ボクシング元ヘビー級王者)とともに、ウクライナのスポーツ界の顔だ。ヴィタリ・クリチコは現キエフ市長でもあり、人々を助けようと最大の努力をしている。ウクライナの民は今、これ以上もなくひとつに団結している。

 この戦争を止めさせられる数少ない方法のひとつが、世界がプーチンに強い憤りをもって彼を孤立させることだ。私はそう確信している。だからこそ私はロンドンから、スポーツの力を借りて世界に発信している。戦争反対の声が世界中から高くわき上がれば、この狂気を止められると思う。私はウクライナ人であること、そしてゼレンスキーのような大統領を持っていることを誇りに思う。この難しい状況において、彼がとっている行動は、まさに英雄のものだ。

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