セリエ、リーガ、プレミアで下剋上。3人の指導者たちによる「反撃の狼煙」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Reuters/AFLO

 欧州サッカー界が変動を見せている。選手で言えば、長くリオネル・メッシ(パリ・サンジェルマン)とクリスティアーノ・ロナウド(マンチェスター・ユナイテッド)のふたりがその中心にいたが、ひとつの時代が終わりを告げつつある。もっとも、明確に次の時代を背負うスター選手が出てきたわけではない。

 そしてふたりのトップスターの力が落ちたこともひとつの契機になり、主要各国リーグでは"下剋上"が起きている。

 スペインで王者を争ってきたFCバルセロナ、アトレティコ・マドリード、イングランドで威勢を誇っていたマンチェスター・ユナイテッド、トッテナム・ホットスパーなどは、今シーズン残り3分の1の時点でリーグ優勝が絶望的な状況にある。2019-20シーズンまでセリエAで9連覇を続けていたユベントスも、圧倒的な強さは影を潜めている。

 ビッグクラブが低迷する一方、群雄割拠の様相を呈しているのだ。

 イタリア、セリエAのナポリは、ルチアーノ・スパレッティ監督に率いられ、27試合を終えた段階で首位に立っている。特筆すべきは守備力の髙さだろう。19失点はリーグ最少。鍛えられたハイプレスが脅威になっている。

 プレー強度の高い選手を要所に配し、攻守に安定している。セネガル代表DFカリドゥ・クリバリ、スペイン代表MFファビアン・ルイス、ポーランド代表MFピオトル・ジエリンスキ、ナイジェリア代表FWヴィクター・オシムヘンと、縦のラインを確立。カウンターでは、サイドから創造的で技術精度の高いイタリア代表ロレンツォ・インシーニェ、マッテオ・ポリターノのふたりが切り込む形も作った。

「相手にサッカーをさせない」

第27節終了時点でセリエA首位に立つナポリのルチアーノ・スパレッティ監督第27節終了時点でセリエA首位に立つナポリのルチアーノ・スパレッティ監督この記事に関連する写真を見る イタリアを代表する戦術家であるスパレッティ流だ。

 もっとも、ヨーロッパリーグのプレーオフ第2戦ではバルサに戦い方を逆手に取られて完敗している。敵陣でのCKを奪われてのカウンター、アダマ・トラオレの爆走から先制点を許している。2点目もGKのロングキックを裏に蹴り込まれ、処理を誤り、フレンキー・デ・ヨングに叩き込まれた。ハイラインの弱みを完全につかれてしまった。

 スクデット(セリエA優勝)の行方は、ハイプレス・ハイラインを調整できるか、にかかっている。

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