あのメッシが今季まだ2得点。毎年ふたケタ得点当たり前のレジェンドに何が起きているのか (3ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

【数字に見えないメッシ効果】

 また、ピッチにおいても、現在のメッシは異なる環境に置かれている。

 バルセロナでは、監督はメッシを中心に戦術を構築し、周りの選手もメッシを最大限に生かすためのプレーに徹していた。たしかに近年はそれが弊害となっていた部分もあるが、少なくともチームが勝つためには、メッシのゴールが勝利への近道だった。

 しかし、エムバペ、ネイマール、ディ・マリアなど違いを生み出せる選手を多数揃え、ある程度チームが成熟しているパリ・サンジェルマンでは、メッシ中心というわけにはいかない。メッシがひとつのパーツとして機能することが、勝つためには重要になる。

 事実、加入当初に周りがメッシにボールを集める傾向がマイナスに作用したことから、次第にメッシが歯車のひとつとしてプレーするようにチーム全体が変化。それが好循環を生むきっかけとなり、エムバペのアシスト数急増という副次的効果につながった。

 パリ・サンジェルマンでのメッシのプレーからは、自らがネットを揺らすことよりも、明らかにチームが勝つためのプレーに徹する姿勢が見てとれる。CLグループステージ第2節マンチェスター・シティ戦で、メッシが躊躇なく壁のうしろで横になったことなどは、現在のメッシに宿る"フォア・ザ・チーム"の精神を象徴する出来事と言える。

 今回のレアル・マドリード戦を振り返っても、たしかにパスミスやボールロストは目についたが、シュート数はエムバペの7本を上回る8本を数え、ボールタッチ数でもチームトップのヴェラッティとレアンドロ・パレデスに次ぐ101回を記録。いわゆるフィニッシュにつながるキーパスも4本あり、特にエムバペへのパス供給はチーム最多の14本と、ふたりの良好な関係性をあらためて証明した。

 もちろん、数字に見えない効果もある。メッシの存在が相手のマークを引きつけるため、対峙したカゼミーロのプレーエリアがいつもよりも狭くなったことがそのひとつ。それにより、周りの選手が使えるスペースや時間が生まれ、とりわけヴェラッティのよさを最大限に引き出すことにもつながった。あのレアル・マドリードを圧倒できた理由のひとつだ。

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