中村俊輔が選出する歴代フリーキッカーのベスト5。「絶対にマネができない」という第1位は? (3ページ目)

  • 篠幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

2位:アンドレア・ピルロ(イタリア/元ミラン、ユベントスほか)

 ピルロのFKは、ボールスピードもあり、25mの距離くらいならカーブで狙い、それ以上になると無回転のブレ球で狙う。本当に多彩なキックを持った選手でした。

 ユベントス時代には、まるで風船を蹴るようにインステップのつま先でボールを足に乗せるようにして、無回転ボールを蹴っていたことがありました。あれはちょっとマネできないですね。実は実際にやってみたんですけど、足首を痛めたので諦めました。

 直接決めるだけではなく、味方に合わせるFKでのアシストも多い。ゲームの流れを読みながら蹴ることができるし、蹴る種類も多彩なので、彼のセットプレーで勝つ試合が多かった。そうなると、味方がセットプレーにものすごく執着してくれるようになります。

「あいつが蹴るならいける」「点を決められる!!」と、みんな頑張るんです。そうやってキッカーと合わせる人たちの間でパイプができてくると、相手にとってセットプレーが脅威になる。だからキッカーの質というのは本当に大事なんです。

1位:ジュニーニョ・ペルナンブカーノ(ブラジル/元リヨンほか)

 ジュニーニョ・ペルナンブカーノはFKでの得点数が一人だけ異常で、ちょっとえぐいですよね。3大リーグでも、あのブレ球を見てみたかったです。

 彼の蹴ったボールが、風船みたいに左右にブレながら飛んでいくのを初めて見た時は衝撃的でした。ブレ球は枠を大きく外したり、壁に当ててしまったり、失敗しやすいキックなのに、彼は枠に行く確率もほかの選手とは次元が違いました。あれはそれまでのFKの概念を変えるほどの影響があったと思います。

 彼の最大の特徴は、足首がガニ股のように自然と開くことです。普通はインサイドキックやインフロントキックでFKを蹴ろうとすると、角度をつけた助走から腰を捻って足の内側に当てる形になります。だけどジュニーニョのようにナチュラルに足首が開いている人は、腰を捻らなくてもインステップキックを蹴るように脚の前の筋肉の力をそのまま使って蹴ることができる。だから、すごく強い縦回転のボールが出るんですね。

 助走も真っ直ぐ入って、足の振りも真っ直ぐ。骨盤も前を向きながら足首だけ横に向ければいいだけ。これはそういう身体の特徴を持っていないとできないですね。ジュニーニョでもう一つ特徴的だなと思うのは、FKになった途端の顔つき。まるで獲物を狙うような顔になるんです。キック精度だけではなくて、メンタルの部分もすごいと思います。

 自然と開く足首と、獲物を狙うメンタルの二つの面が自分にはないし、絶対にマネができないというところで、ジュニーニョを1位にしました。
(おわり)

中村俊輔 
なかむら・しゅんすけ/1978年6月24日生まれ。神奈川県横浜市出身。桐光学園高校から97年に横浜マリノス入り。その後レッジーナ(イタリア)、セルティック(スコットランド)、エスパニョール(スペイン)と欧州で活躍し、2010年に横浜F・マリノスに戻ってプレー。17年からジュビロ磐田、19年からは横浜FCでプレーしている。日本代表国際Aマッチ98試合出場24得点。これまで数多くのFKを決めて、観衆を魅了してきた。

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