新監督シャビは救世主ではなかった。バルサ、ホームでのドローでCL敗退の危機 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 中島大介●写真 photo by Nakashima Daisuke

 ヨハン・クライフもジョゼップ・グアルディオラも、3バックでよく戦っていた。だが、そのベースとなっていたのはアヤックス型の3バック。中盤ダイヤモンド型の3-4-3だ。4分割にすれば3-3-3-1、3-3-1-3、あるいは3-1-3-3となる。

 グアルディオラはリオネル・メッシを0トップに据える3-4-3を好んだが、それは3バックでいる時間の長い3バック、すなわち4バック以上に攻撃的な3バックだった。世界で最も攻撃的な布陣と言っても過言ではなかった。

 クライフは5バックで守ろうとする守備的サッカーの監督を「人のことを悪く言いたくないが、趣味の合わない人」と断じ、「そんな戦法を取ってまで勝ちたいのか」と蔑んだものだ。イタリアやドイツで90年代後半に流行ったサッカーがこれになるが、亡きクライフ、あるいはグアルディオラは、ベンフィカ戦に臨んだシャビのサッカーを見て、どう思っただろうか。 

 それはクレマン・ラングレ、ジェラール・ピケ、ロナウド・アラウホの3人が、常時最終ラインにへばりつくように構え、ユスフ・デミル(右)、ジョルディ・アルバ(左)の両ウイングバックが、単騎でサイド攻撃を仕掛けるサッカーだ。

 最終ラインに人数を1人多く割けば、前方で1人分の不足を招く。片側を1人減らすとバランスが崩れるので、左右を各1人減らし、真ん中に1人、人を多くすることになるわけだが、となると、攻撃は自ずと真ん中に偏る。クライフが徹底的にこだわったサイド攻撃は、後半途中、オスマン・デンベレが交代出場するまで、ほぼきかない状態にあった。

 しかも遅攻。ボール支配率の高いサッカーだ。この日の支配率は60対40だった。その真ん中でボールを奪われる機会が多い状態は、相手に反撃を食いやすい危険な状態を指す。この日のベンフィカは守備的だったので、反撃を許す機会はさほどでもなかったが(それでも何度か決定的なチャンスをつかまれている)、次戦の相手、バイエルンには確実にそのプレスの餌食になるだろう。このままいけば、クーマン監督のもとで戦った第1戦(0-3)より、その可能性は高いと見る。

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