もはや「サイド」でも「バック」でもないサイドバック。マンCのカンセロに代表される最先端の姿
サッカー新ポジション論
第2回:サイドバック
サッカーのポジションや役割は、時代と共に多様化し、変化し、ときに昔のスタイルに戻ったりもする。現代サッカーの各ポジションのプレースタイルや役割はどうなっているのか。今回は長い歴史で役割が大きく変わってきた、サイドバックを取り上げる。
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現代のサイドバックの典型と言われるカンセロ。だが、一番多くいる位置はサイドでもバックでもないこの記事に関連する写真を見る<「サイド」でも「バック」でもない>
サイドバックを、ポジション名で呼ぶことの意味がなくなっている。
守備専業だったのは遠い昔で、サイドバックはサイドハーフになり、ウイングバックになり、ウイングでもあったわけだが、現在に至っては形容するポジション名がない。「サイド」でもなければ「バック」でもないのだから、まったく名が体を表さなくなっているのだ。
典型がマンチェスター・シティのポルトガル人、ジョアン・カンセロである。
ポジションを文字どおり「場所」とするなら、カンセロの居場所はサイドではないし後方でもない。一番多くの時間とどまっているのは中盤の後方なので、1930~50年代の「WMシステム」時代の呼称で言えば「ハーフバック」が最も合っていると思う。
いちおうスターティング・ラインナップの位置では、サイドバックで間違いない。しかし、サイドバックの位置にいるよりも、そうでない時間のほうが明らかに長いのだから、カンセロをサイドバックと呼ぶのはむしろ不自然だろう。
ジョゼップ・グアルディオラ監督の率いるシティは、およそ大半の選手に相応しいポジション名がない。センターフォワードは「偽」だし、サイドバックも「偽」。ウイングも片側はだいたい「偽」だ。偽ナントカでないのはセンターバックぐらいである。そのなかでもカンセロは別格で、偽サイドバックなのか偽ハーフバックなのか判別がつかない。
もうシティのようなサッカーをポジションで括ろうとすること自体が、おそらく無駄な努力なのだ。デジタルなものを、無理やりアナログで処理しているような徒労感がある。
それにしても、サイドバックはいつからこんなふうになっていたのだろう。
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