ユーロで優勝、イタリア復活の裏側。マンチーニはこうして「強い代表」を作った (2ページ目)

  • 利根川晶子●文 text by Tonegawa Akiko
  • photo by Reuters/AFLO

「マンチーニのインテルの3連覇や、マンチェスター・シティを初優勝に導いたという記憶は、直前のインテルやゼニトでの成績不振により、どこか過去のように思われていたからだ」


 就任1日目からマンチーニが目指していたのは「代表から遠のいてしまった人々の心を取り戻すこと」だった。そのためには、見ていて楽しいサッカーをすることが重要だった。スピーディーにパスを回し、ボールをキープし、高い位置でプレッシャーをかける。それまでの「守ってカウンター」というイタリアの伝統的なサッカーを、マンチーニはまず変えることにした。

 だが、その実現のためには、それに対応できるスキルを持った選手たちが必要だった。マンチーニは多くの試合を見て回った。国外の試合にも足を運んだ。チーム名や名声に影響されることなく、自分の目で選手を見極め、たとえそれまで一度も代表に選ばれたことのない選手たちも次々に招集していった。33歳で初代表入りをしたフランチェスコ・カプート(今回のユーロのメンバーではないが)のような選手もいれば、ニコロ・ザニオーロのように、まだセリエAで一度もプレーしていないうちから招集される者もいた。

 見ていて楽しいサッカーをするには選手自身が楽しまなくてはいけない。それもマンチーニのサッカー哲学だ。だが、選手が不仲であればプレーしていても楽しくはない。マンチーニは選手たちを、ただの寄せ集めではなく、本当の絆で結びつけることに力を注いだ。

 彼が目指したのは共通のスピリットを持つチーム、互いをリスペクトするチームだ。それがどんなものであるのかを説明するのに、彼は言葉で語るよりも最高のお手本を用意した。マンチーニとその脇を固めるスタッフたちの関係だ。ジャンルカ・ヴィアッリ、アッティリオ・ロンバルド、ファウスト・サルサーノ、ジュリオ・ヌチャーリ、アルベリコ・エヴァーニ......かつて選手時代にすばらしい時をすごした仲間たちは、誰もが何をすべきか、マンチーニが何を求めているかを何も言わずとも理解していた。

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