ユーロでスイスのスーパースターが爆発。ひときわ小柄もド派手なゴールで真価を発揮 (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

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 ユーロに出場している多くのチームは、選手の所属するクラブもリーグも異なっている。スイスはブンデスリーガでプレーする選手が多いが、フランス、オランダ、イングランド、イタリア、クロアチア、ポルトガルでプレーする選手もいる。こうした選手たちを招集して編成する代表チームには、ほとんど時間がない。試合でチームをつくっていくことになる。寄せ集めと言っていい。

 ところが、その寄せ集めチームに意外と一体感がある。むしろ寄せ集めだからこそかもしれない。時間がないのでチームづくりは選手たちの最大公約数になる。つまり、育成年代で培ってきた母国のサッカーが拠り所だ。

 もっと言えば、それぞれの国で「サッカーとはこういうもの」というコモンセンスである。他国から見ると、その国独特だったりするのだが、当人たちにとっては「え、そうなの?」という類の、とくに意識することもない共通の基盤だ。

 余談だが、ロシアW杯の日本代表もコモンセンスのチームだった。監督交代でろくに練習時間もとれないまま本大会に突入していたが、日本らしいプレースタイルでベスト16まで進めた。長年、「日本はどうプレーすべきか、日本サッカーとは何か?」が議論されてきたが、意外ともうすでに「日本サッカー」はそこにあったわけだ。

 所属クラブで出場機会を失っていた香川真司が、生き生きと攻撃を牽引していた。シャキリも同じで、スイスには彼の居場所がちゃんとあった。

<明確な組織のなかで即興を担当する>

 スイスと言えば手堅い守備、いやガチガチの守備が伝統だった。1930年代にオーストリア人のカール・ラパン監督が導入したスイーパーシステムは「ボルト」と呼ばれ、イタリアで「カテナチオ」の基になっている。

 変化が起きたのは21世紀になってから。育成が充実し、プレースタイルもポゼッション型へシフトしていく。現在のスイスはポジショナルプレーを導入したモダンなチームだ。

 ただ、意地でもつなごうとする肩肘張った感もある。即興的な変化もないではないが、基本的には各ポジションをしっかり全うする律儀なサッカーだ。オーガニゼーションが明確なのはスイスらしさでもある。そのなかでインプロビゼーション(即興)担当がシャキリだ。

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