ユーロでイタリア代表が「全力国家斉唱」。選手たちが気合が入りまくりの理由 (3ページ目)

  • 利根川晶子●文 text by Tonegawa Akiko
  • photo by Getty Images

「俺たちにとって国歌はただの歌じゃない。情熱の証なんだ」

 それにしても今回のイタリアはバランスの取れた良いチームだ。

 18年ロシアW杯の予選で敗れ、60年ぶりにW杯出場を逃した時には、イタリア人はアッズーリの不甲斐なさを怒り嘆き、それを「アポカリプス(世界の終末)」とまで称した。

 それからアッズーリは一新された。監督にはロベルト・マンチーニが就任し、これまでとは異なるポゼッションサッカーを目指し、多くの若い世代もチャンスを得た。今のイタリアには他の国のようなスターはいない。しかしそのチームワークは最高だ。

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 それはこれまでの3試合で、マンチーニが登録選手の26人中25人まで(第3GKのアレックス・メレトのみ使われていない)出場させたにもかかわらず、そのパフォーマンスの質が変わらないところからもわかる。「マンンチーニの最大の功績は、チーム全員をユーロのダイナミズムに巻き込んだことだ」と、国内の有力スポーツ紙ガゼッタ・デッロ・スポルトは評している。

 また、かつてレスターをプレミアリーグ優勝に導いたイタリアの智将クラウディオ・ラニエリは、「このイタリアはクラブチームに近い。ターンオーバーしても同じ形、同じボールポゼッション、何より同じ情熱でプレーできる」と称賛した。

 ウェールズ戦のあと、マンチーニ監督自身もこう語っている。

「私のチームにレギュラーはいない。その日先発する11人の選手がいるだけだ」

 選手の間に格差はない。誰もが主役になれる可能性のあるアッズーリの雰囲気は、今最高に良い。選手たちが歌っているのは国歌だけではない。ウェールズ戦のあと、90年イタリアW杯のテーマソング「Un' estate Italiana(あるイタリアの夏)」を、彼らはバスの中で、ホテルの前で、選手もコーチ一緒になり肩を組み歌っていた。ロレンツォ・インシーニェがポータブルステレオで曲を流せば、フロレンツィがその様子を録画しSNS上にアップする。

 今回のユーロは、90年イタリアW杯以来の、国内で開催される(一部の試合だが)A代表の国際大会だ。当時もイタリアはグループステージを同じローマのスタディオ・オリンピコで戦い、3戦3勝無失点で決勝トーナメントに進出、準決勝まで勝ち進んだ。

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