ユーロ2020随一。中盤トリオがイタリアの「ファンタジー」を復活させた
これまで数々の栄光を手にしてきた世界有数の強豪イタリア代表「アッズーリ」にとって、60年ぶりにW杯本大会出場を逃した4年前の出来事は、不覚のひと言では片づけられない屈辱的事件だった。
ただし、2018年W杯予選敗退は驚きの黒歴史とはいえ、実際は2006年に世界の頂点に立って以降、近年のイタリアは"密かな"低迷期が続いていたと言っていい。それを象徴するのが、2010年、2014年と続いたW杯におけるグループリーグ敗退という失態だ。
アッズーリの攻撃を牽引するインシーニェ(左)とジョルジーニョ(右)この記事に関連する写真を見る とはいえユーロでは、2008年にベスト8、2012年に準優勝、2016年にベスト8と、それなりの結果を残していたのも事実。
だが、その中身を見てみると、2008年大会と2012年大会はギリギリの成績によるグループリーグ突破。唯一、アントニオ・コンテ監督の下で挑んだ2016年大会ではベルギーを抑えてグループ首位通過を果たしたが、それ自体がサプライズと言われるほどイタリアの前評判は高くなかった。
そういう意味では、4年前に起こった事件には十数年にわたる伏線があったのだ。
そして、そのなかでとりわけ深刻とされてきたのが、ワールドクラスの不在だった。つまり、ファビオ・カンナバーロ(2011年引退)、フィリッポ・インザーギ(2012年引退)、アレッサンドロ・デル・ピエロ(2014年引退)、フランチェスコ・トッティ(2017年引退)、アンドレア・ピルロ(2017年引退)など、2006年W杯優勝メンバーの後継者が長期にわたって枯渇した状態が続いたことである。
しかし、今回のユーロに臨むイタリアは、明らかにこれまでとは違った流れの中にある。見る者に希望を与え、期待を集めるにふさわしいサッカー。ようやく低迷期から脱出しそうな兆しが見て取れる、ワクワクするようなチームに仕上がっているのだ。
改革の旗手は、2018年5月から指揮を執るロベルト・マンチーニ監督だ。イタリアサッカー界のレジェンドであり、指導者としても数々のタイトルを手にしてきたマンチーニは、W杯本大会出場を逃して混乱しているチームをまさにゼロから作り直した。
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