マンチェスター・シティのレアルとPSGにはない貴重さとは。CL決勝へ前進 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 マンチェスター・シティの左と右、どちらが強力かと言えば左だ。つまりPSGに長所を抑えられることになった。順調に滑り出せなかった原因だ。

 PSGはマンチェスター・シティのお株を奪うようなパスワークを披露。そこにネイマールが絡むと、マンチェスター・シティをいっそう慌てさせた。だが、もうひと押しが足りなかった。ネイマールが活躍する一方、エムバペが沈黙したここと、それは深く関係する。パスワークが冴えるほど、縦方向へのスピードが鈍るほど、エムバペはボールに触れる機会が減った。消えた状態に陥った。ネイマールとポジションが重なっているのと同時に、縦に走ってなんぼの選手でもあるからだ。エムバペにとって遅攻は、得意な攻撃スタイルではない。

 試合の流れはPSGに傾いていた。しかもホーム戦だ。イケイケの状態にあった。にもかかわらず、PSGは結局、セットプレーの1点で打ち止めになった。2人のバロンドール候補のキャラが、その一番の足枷になっていたとは皮肉だ。

 マンチェスター・シティに流れが傾いたのは前半の終盤。パスワークが冴え始めた。自ずとボール支配率も上昇。攻めるマンチェスター・シティ、守るPSGの構図は、時間の経過とともに鮮明になった。ただ、カウンター得意のPSGにとっては、追加点を奪うチャンスだったとも言える。だが、それはほぼ不発に終わった。ネイマールと、エムバペがお互い真ん中で、縦関係を築くようにポジションを取ったことで、カウンターのルートが3本(真ん中と左右)ではなく、2本(真ん中と右)に減ったからだ。

 ルートが3本あれば、カウンターが始動した瞬間、ピッチには弾けるようなデザインが描かれる。ラッパ状に広がりを見せる。右のディ・マリアより縦への推進力がある他の2本は本来、重要度の高いルートであるはずだ。それがひとつに固まった。左をカバーするヴェラッティには、残念ながら縦への推進力はない。

 マンチェスター・シティの同点ゴールは後半19分。左からケヴィン・デ・ブライネが右足で中央に巻くように蹴ったボールが、ワンバウンドしてゴールの隅に飛び込むラッキーな一撃だった。続く26分、リヤド・マフレズが決めた逆転弾も、FKが壁の間を抜けるという運に恵まれた得点だった。

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