マンチェスター・シティのレアルとPSGにはない貴重さとは。CL決勝へ前進 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

◆マンチェスター・シティは金だけでなく頭を使った

 だが、この1-2というスコアには必然性を感じる。どちらがいいサッカーだったかと問われれば、やはりマンチェスター・シティに軍配を挙げたくなるのである。

 マンチェスター・シティがCLを制すれば、デ・ブライネはバロンドールの有力な候補になるだろう。しかし、この選手には、マンチェスター・シティの2人のようなネガティブな要素はない。ネイマールやエムバペに限った話ではない。リオネル・メッシ、クリスティアーノ・ロナウドはもちろん、かつてのロナウジーニョにもあてはまる。彼らは我が強いのか、チームのバランスを無視し、本能のままに動いてしまう傾向がある。あるとき、それが弱みになる危険を孕んでいる。

 デ・ブライネはそうした心配が一切ないスターだ。監督の意図が反映された0トップ型4-3-3というべき布陣の中に収まる柔軟性を兼ね備える。チームのバランスの維持にも貢献しているのだ。

 昨季の覇者バイエルンもそうした好チームだったが、今季はやや硬質化した。一昨季の覇者リバプールは、バランス的にFWの3人(モハメド・サラー、サディオ・マネ、ロベルト・フィルミーノ)が重たい感じのサッカーだった。3人の力に委ねる傾向があった。ロナウドを擁したレアル・マドリード、メッシを擁するバルセロナしかり。マンチェスター・シティにはそうした意味で貴重さを感じる。

「監督中心のサッカー対スター選手中心のサッカー」と、伝統的なバルサとレアル・マドリードのスタイルの違いについて解説してくれたのはスペイン人記者だった。マンチェスター・シティのサッカーはそうした意味でバルサ的だ。ある志向の中に、ピッチ上の全選手が整然と収まっている。

 バルサ、そしてスペインのチームが総じて失ってしまった魅力が、マンチェスター・シティには集約されている。この試合の前日、チェルシーにホームで引き分けたレアル・マドリードと比較すると、それはより鮮明になる。ロナウドというスターが抜けてはや3年が経つが、いまだ、もぬけの殻状態にある。新たな魅力を吹き込むことができていない。

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