2021.03.13

ジダンはファンタジーを捨てた。欧州3連覇と名将になれた理由

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

ファンタジスタ×監督(2)
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 元ファンタジスタの監督として、ジネディーヌ・ジダン(48歳)は代表的な成功例だろう。2016-17からレアル・マドリードを率いての欧州3連覇は金字塔と言える。卓抜とした勝負強さだ。

「ジダンは自分たち選手のことをわかってくれている。キャラクターやコンディション、あらゆる観点でね。だから、選手はその決断を信用している」

 欧州3連覇の殊勲者であるFWカリム・ベンゼマは、ジダンの人心掌握術を絶賛している。ベンゼマ自身、ゴールが奪えずにメディアの集中的批判を浴びた時、ジダン監督の絶対的な信頼のもと、着実に結果を残してきた。チームに張り巡らされたジダンの求心力は、想像以上に強固だ。

 ジダンが他の「ファンタジスタ×監督」と一線を画すことができた理由はどこにあるのか?

再びレアル・マドリードを率いているジネディーヌ・ジダン再びレアル・マドリードを率いているジネディーヌ・ジダン  ジダンは、説明不要のファンタジスタだろう。

 そのプレーのひとつひとつが芸術作品だった。一瞬でチャンスを作り出すパスだけでなく、ボールコントロールは柔らかく、「マルセイユルーレット」のように独特の身のこなしで、強いインパクトを与えた。レアル時代の2001-02シーズン、チャンピオンズリーグ(CL)決勝レバークーゼン戦で欧州制覇を決めたボレーシュートの美しさは、永遠に語り継がれるはずだ。

 2013-14シーズン、ジダンは本格的に指導者の道に入っている。レアル・マドリードでカルロ・アンチェロッティ監督のアシスタントコーチを担当。帝王学を学んだ時期と言えるか。2014-15シーズンからはカスティージャ(レアル・マドリードのセカンドチーム)の指揮を執ったが、ライセンスが条件を満たしていないなどで一時は問題となった。2015-16シーズンからは名実ともにカスティージャを率いたが、16年1月、トップチームが不振に陥り、急遽ラファエル・ベニテス監督の後任を引き受けている。

 そこから監督としての栄光が幕を開けた。すぐさま選手たちを掌握し、ひとつに束ねる。世界最高のファンタジスタとしての肩書と実力は、一歩目を揺るぎないものにした。