ジダンの窮地を救えるのは誰だ? 大勝しても「変われない」レアル

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AP/AFLO

「マドリードが立ち上がる!」

 スペイン大手スポーツ紙『マルカ』は、前節アラベス戦で1-4と大勝を飾った"白い巨人"レアル・マドリードを賞賛している。それまでの痛烈な批判は消えた。手のひら返しとしても、鮮やかすぎるか。

 もっとも、戦い方の中身は変わっていない。

 前半、後半の序盤はもたつき、チームとしての危うさを露見させていた。ルカ・モドリッチが超絶技術で流れを変え、トニ・クロースがセットプレー、もしくはそれに近い状態でのキックで相手の急所を突き、カリム・ベンゼマが仕留めた。バックラインは不安で、戦術的にも未成熟だったが、圧倒的な個人能力で相手を沈める力があった。

 アラベス戦は、新型コロナウイルス陽性の反応があったジネディーヌ・ジダン監督は休養で、ヘッドコーチのデビッド・ベットーニが指揮を取っている。ただ、戦い方に変化はない。同じメンバー、同じ長所と短所が見えた。

 では、ジダン・マドリードの真の姿とは――。

スペイン国王杯で敗退。この後、新型コロナに感染したとの発表があったジネディーヌ・ジダン監督スペイン国王杯で敗退。この後、新型コロナに感染したとの発表があったジネディーヌ・ジダン監督 ジダン監督は、窮地に立たされている。

 1月14日、スペインスーパーカップ準決勝でアスレティック・ビルバオに敗れたのは、ひとつ目の警告だった。決勝にも届かず、タイトルを逃した。

 そして1月20日、スペイン国王杯3回戦で2部B(実質3部)のアルコジャーノに2-1で敗れ去った衝撃は小さくない。

「恥辱ではない」

 試合後、ジダンはそう否定したが、それに等しい敗北だった。チーム戦術が機能せず、動きがノッキング。退場でひとり少なくなった相手にセットプレーから同点弾を浴び、延長戦に入って優勢に試合を進めるも、最後は無残なカウンターを浴びて沈んだ。

 たった1週間で2つのタイトルを逃し、ジダン監督がやり玉に挙がるのは当然か。

「交代が遅い」「戦術面が革新されていない」「得点力が落ちた」「守備の脆さ」......。結果が伴わないときは、あらゆる批判がもっともらしく聞こえる。

 事実、ジダンは交代策に消極的で、5人の枠を使い切らないこともしばしばだ。また、戦術的に能動的ではなく、守りを固め、決定力を重んじる形で、力の劣る相手に足元をすくわれる傾向が強い。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る