「狂わないとできない」。バルサのGKが背負わされる重い十字架 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中島大介●写真 photo by Nakashima Daisuke

「誰かに士気を高められなくても、自分はいつも戦う準備ができていた。緊張はなかった。たとえうまくいかなくても避難場所はあるし、"大事な瞬間の後も人生は変わらずに続く"という達観ができていた。自分は練習でも試合と同じように挑み、鍛えている。失敗するイメージだって、そこで培っているのさ。失敗したら、次はこうすればいい、という準備ができていれば、恐怖はコントロールできる。それは自信につながるんだ」

 なかなか到達できない境地だろう。

 今シーズンも、バルサのGKは十字架を背負わされている。

 第8節のアラベス戦、ブラジル代表GKノルベルト・ネトはバックパスを処理できず、相手に奪われて失点を食らった。散々な批判に晒された。シーズンを通し、そこまでひどいプレーはしていなかったが、失点シーンは繰り返しテレビで流され、やり玉に挙げられた。

 その後、正GKに戻ったドイツ代表マルク=アンドレ・テア・シュテーゲンだが、第10節のアトレティコ・マドリード戦では、広大な裏のスペースに出たボールに反応。リベロGKとして、ペナルティエリアから10メートル以上も飛び出したが、あっさりかわされてしまう。そして無人のゴールに蹴り込まれた。大胆不敵なプレーは、失敗して批判に塗れることになった。

 不条理な扱いだろう。しかし、ネトもテア・シュテーゲンも、挑み続けるしかない。それがバルサGKの宿命なのだ。
(つづく)

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