ラップトップ世代の代表格。若くても経験豊富なナーゲルスマンの才能 (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 どうしたいのか、どんなプレーをしたいのか。そのアイデアが明確でなければ何もないのと同じだ。しかし、アイデアはあっても選手に伝わらなければ意味がないし、実行できなければ絵にかいた餅にすぎない。つまり、監督の才能は試合でチームが何をしようとしていて、それがどの程度表現できているかで、ある程度はかることができる。

 ナーゲルスマン監督のトレーニングはウォーミングアップからテーマが貫かれているそうだ。時には台形のフィールドでゲームをさせるなど、さまざまな斬新なメニューもあるが、それも目的から逆算したものに違いない。そうした目的が明確なトレーニングの成果は、試合に表れているように思う。

 相手の長所を削り、弱点を突くのもうまい。相手のどちらのセンターバックにボールを持たせるか、そうした時の次の展開はどうなるか、そこでアドバンテージを握るにはどうするか。そうした手順に手抜かりがない。バイエルンに勝てるのも、戦力差を埋める計略をナーゲルスマン監督が持っていたからだ。

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 ライプツィヒはスポーツディレクターのラルフ・ラングニックが教則本を残していて、誰が監督をやっても基本はラングニックのサッカーのはずだった。ところが、ナーゲルスマンはラングニック方式を踏襲しながら、違うところも多々あって、むしろナーゲルスマンの色のほうが強い。さらにナーゲルスマン方式のほうがうまくいっている。

 これはラングニックも含め、これまでのライプツィヒの監督よりもナーゲルスマンのほうが優れているからではないかと思われる。腕が違うのだ、監督としての。

 若いけれども監督としての才能に恵まれていて、若いだけに時間もたっぷりある。まだ現役選手でプレーしていてもおかしくない年齢だが、監督としては老獪さも漂わせているナーゲルスマンのこれからが注目される。

ユリアン・ナーゲルスマン
Julian Nagelsmann/1987年7月23日生まれ。ドイツのランツベルク・アム・レヒ出身。20歳で現役引退後、アウクスブクルや1860ミュンヘン、ホッフェンハイムのユースチームを指導。2016年2月に28歳でホッフェンハイムの監督に就任すると、そのシーズンのクラブの1部残留に成功。翌シーズンは上位進出でCL出場権を獲得するなどの手腕を発揮。2019-20シーズンからはライプツィヒを指揮。昨シーズンはチームをCL準決勝に導いた。

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