現代サッカーの一大派閥「ラングニック流」。その戦術を徹底分析する

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

サッカー名将列伝
第14回 ラルフ・ラングニック

革新的な戦術や魅力的なサッカー、無類の勝負強さで、見る者を熱くさせてきた、サッカー界の名将の仕事を紹介する。今回登場するのは、ザルツブルクやライプツィヒをスポーツディレクターの立場で長く強化している、ラルフ・ラングニック。数年前は独特のサッカーと見られた彼の戦術も、今やサッカー界の一大派閥となっている。そのラングニックの戦術とスタイルを解析する。

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<現代サッカーの一大派閥>

 2019-20シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)で優勝したバイエルン(ドイツ)は衝撃的だった。プレッシングの苛烈さ、その裏付けとなっているフィジカルの強靭さ、個々のスピードとテクニックは、新時代の到来を思わせた。

現代サッカーの戦術に大きな影響を与えている、ラルフ・ラングニック現代サッカーの戦術に大きな影響を与えている、ラルフ・ラングニック ラルフ・ラングニックは、このドイツを中心とした戦術的な流れの源流にいた人物だ。ザルツブルク(オーストリア)、ライプツィヒ(ドイツ)のスポーツディレクターや監督として有名だが、「名将」と呼ぶには監督としての実績が少なすぎる。ただ、その後のサッカーに与えた影響力という点で、ラングニックは無視できない。

 ラングニックのサッカーをごく簡単に表現すると、スペインの"ティキ・タカ"に代表されるポゼッションサッカーへのアンチテーゼだ。

 ライプツィヒ時代、4-2-2-2のフォーメーションを組んでボールサイドにほぼ全員を終結させ、縦に速い攻め込みとプレッシングでブンデスリーガに一石を投じた。

 サイドチェンジを行なわず、バックパスもあまりしない。狭いエリアを強引に縦へボールを運んでいく攻撃は、当然ボールを失いやすい。だが、最初から狭いエリアに人数を集めているため、奪われても即時にプレッシングができる。

 縦志向の強い攻撃とハイプレス、つまりボールポゼッションにまったく重きを置いていないプレースタイルである。

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