2020.12.14

オシム監督の「考えて走る」の正体。格上をやっつける胸熱サッカー

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

サッカー名将列伝
第26回 イビチャ・オシム

革新的な戦術や魅力的なサッカー、無類の勝負強さで、見る者を熱くさせてきた、サッカー界の名将の仕事を紹介する。今回はジェフユナイテッド市原や日本代表を率いたイビチャ・オシム監督。考えて走るサッカーが見る者を熱くさせた。今回は改めてそのサッカーの戦術的特徴を振り返る。

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<格上を圧倒して倒す>

 初めてその姿を見たのは、パルチザン・ベオグラード(当時ユーゴスラビア、現セルビア)を率いて来日した1991年の時だった。190㎝の巨体がミニゲームでレフェリーをやっていた。のしのしと黙って歩いていたが、ある瞬間に「そこ」という感じで指さすと、まさにそのスペースへパスが通ってゴールに結びついた。

日本代表を率いていたころのオシム監督 2回目は、たぶん2002年ワールドカップだ。ジョゼフ・ベングロシュ(スロバキア)とコンビでFIFAの技術レポートを作成していたようだ。ベングロシュは元チェコスロバキア代表監督で、02年はジェフユナイテッド市原(現ジェフユナイテッド市原・千葉)の監督だった。

 3回目は03年、ジェフ市原の監督に就任してから。その後のイビチャ・オシム監督についてはすでに多くのことが語られつくしている。

 オシム監督は中位くらいのチームをトップクラスに引き上げる手腕に定評があった。最初に指揮を執ったジェリェズニチャル(ボスニア・ヘルツェゴビナ)やシュトルム・グラーツ(オーストリア)がそうで、ジェフもそうだった。ユーゴスラビア代表にも当てはまるかもしれない。

「走るサッカー」が代名詞、FWやMFを育てるのが上手で、結果だけでなく内容にもこだわり見応えのあるチームをつくる。

 現在ならマルセロ・ビエルサ監督(リーズ)のようなタイプだろう。できあがった強いチームを予定どおり優勝させる「優勝請負人」ではなく、言ってみれば「幸福請負人」。ファンに感動を与え、誇りに思えるようなチームにするスペシャリストだ。