グアルディオラに異常事態発生。発明家は次の材料を手に入れられるか

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

サッカー名将列伝
第24回 ジョゼップ・グアルディオラ

革新的な戦術や魅力的なサッカー、無類の勝負強さで、見る者を熱くさせてきた、サッカー界の名将の仕事を紹介する。今回はスペイン人のジョゼップ・グアルディオラ。バルセロナ、バイエルン、マンチェスター・シティの監督を歴任し、数々のタイトルを獲得。また常に新しい戦術を発明するなどして、ファンを熱くさせてきた。しかし、今季はどうも様子がおかしい。稀代の名将は正念場を迎えているのだろうか。

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<今季の発明はカンセロ>

 ジョゼップ・グアルディオラ監督が、マンチェスター・シティとの契約を延長した。延長期間は2年、2022-23シーズンまで指揮をとる見込みとなった。

マンチェスター・シティで5年目を迎えるグアルディオラ監督だが、今季は苦しいシーズンスタートだマンチェスター・シティで5年目を迎えるグアルディオラ監督だが、今季は苦しいシーズンスタートだ シティでのキャリアはすでに5シーズン目に入っている。これまでプレミアリーグ優勝2回(2017-18、2018-19)、FAカップ(2018-19)を獲っているが、チャンピオンズリーグ(CL)は優勝していない。

 バイエルンの時もブンデスリーガは在任中の3シーズンですべて優勝したが、CLには届かなかった。バルセロナの時は2度優勝しているが、ペップにとってCLはしばらく縁がない。

 CLどころか、今季はプレミアでも第9節終了時点の順位は何と13位。グアルディオラ監督の率いるチームでは、異常な事態と言っていい。

 グアルディオラの志向するプレースタイルは、バルセロナの時から変わっていない。しかし一方で、常に新しい何かを生み出してきた。ボール支配とハイプレスというベースは不変だが、それを実現するための手段がその都度変化している。

 今季の発明はジョアン・カンセロのポジショニングだ。いちおう左サイドバック(SB)ということになっているカンセロだが、攻撃の時はインサイドに入っていく。バイエルン時代のダビド・アラバで有名になった「偽SB」と似ているが、少し違う。

 アラバの「偽SB」はウイングプレーヤーへのパスコースを開けるのと、ハーフスペース(サイドと中央の中間)で余ってポゼッションを優位にするという2つの目的があった。

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