バルサ不在のカンプノウで起きたドラマ。レアルの優勝、見たかった (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 中島大介●写真 photo by Nakashima Daisuke

 9万8000余人を収容する欧州最大のスタジアムの、最上階にあたる場所からピッチを見下ろせば、その選手が誰なのかという関心が、少しばかり低下する。たとえば、リオネル・メッシに対しても、「わー、メッシだー!」と、変に感激しなくなる。特定の選手に肩入れすることなく、フラットに眺めることができる。ゲーム性、集団性に自ずと関心は向く。冷静になって観戦に集中することができる。

 カンプノウの観客が、他のスタジアムに比べて圧倒的に静かなことと、それは関係しているのかもしれない。彼らの視線は鋭いのだ。チャンスに湧く歓声より、およそ10万人の観衆が、惜しいシーン、際どいシーンで一斉に吐く溜息に圧倒される。選手には瞬間、観衆から目を凝らされているという緊張感が植え付けられることになる。応援団らしき集団がスタジアムに存在しないに等しいにもかかわらず、だ。

 カンプノウは現在、大規模改築工事に入っている。

 世界的なコンペを勝ち抜き、建築デザインを担当することになったのは、東京・千代田区に本社を構える日建設計だ。

「光と風とオープンスペースを意識したメディテラネオ(地中海)らしいスタジアム」「スタジアムの外側にテラス状の開放的なコンコースを纏わせ、流動性を兼ね備えた快適な滞留空間を設けることで、スタジアムをスポーツの枠を超えた開放的な公園とすること」とは、同社の村尾忠彦バルセロナ支店長にうかがった話だ。

 完成予定は2024年。1階席2万、2階席4万、そして3階席が4万5000の計10万5000人収容のスタジアムにスケールアップする。完成が待ち遠しい限りである。

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