高勝率のロペテギ監督。暗黒の1年を乗り越え、名将への階段を上る (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

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 ポルトを率いてCL準々決勝でバイエルン(ドイツ)と対戦した時の采配は、ロペテギ監督の優秀さが表れていた。

 ホームの第1戦では、バイエルンのビルドアップを狙い撃ちにして3-1と撃破。アウェーでは前半に捨て身のパワープレーで押し込んできたバイエルンに面食らい、前半で0-5と蹂躙される。だが、ハーフタイムを挟んでの後半は立ち直り、後半だけなら1-1だった。

 合計4-7でポルトは敗退したが、2試合を前後半で4つのパートに分けると、ポルトがバイエルンに負けていたのは3つめの45分間だけだった。

 当時バイエルンを率いていたのは、ジョゼップ・グアルディオラ監督である。下馬評でもバイエルンの圧倒的優位だった。そのなか、稀代の名将に4分の3は負けていなかったのだ。

 5点奪われたアウェーの前半も、アリアンツ・アレーナの雰囲気と息もつかせぬハイプレス、ハイクロスの連続に選手たちが縮み上がってしまったのが要因。この45分間にすべてを注ぎ込んで一気に趨勢を決めてしまったグアルディオラ監督の采配は見事だが、ロペテギ監督もトータルでは決して負けていなかった。

 それまでは育成チーム向きの指導者と見られていたロペテギだったが、ポルトでは勝負師としての一面も見せた。スペイン代表の立て直しにも成功した。レアルの一件で大きな傷を負ったとはいえ、これだけの監督が放っておかれるはずがない。2019-20シーズンはセビージャを率いて、CL出場圏内の4位に導き、ヨーロッパリーグでは決勝でインテルを破って優勝を果たしている。

 セビージャの戦い方は、同シーズンのCLで優勝したバイエルンとよく似ていた。

 後方でしっかりとビルドアップはするが、そこから敵陣の中央にはパスを入れず、サイドからの攻撃に徹していた。中央にボールを経由させるのはサイドチェンジの時ぐらい。ここでボールを失いたくないのと、逆にここで奪いたい。そういう戦い方はバイエルンとよく似ていた。

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