2020.09.30

人気抜群のクロップ監督。サッカーの根源の喜びをかきたてるキャラクターと戦術

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

サッカー名将列伝
第17回 ユルゲン・クロップ

革新的な戦術や魅力的なサッカー、無類の勝負強さで、見る者を熱くさせてきた、サッカー界の名将の仕事を紹介する。今回はリバプールを率いて、チャンピオンズリーグ(CL)優勝、プレミリーグ優勝の成功を収めている、ユルゲン・クロップ監督を取り上げる。情熱を燃焼させるような戦い方と、本人の快活なキャラクターが、多くのファンにサッカーの喜びを与えている。

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<プレッシングと波状攻撃>

 サッカー界から理想の上司を選べというアンケートがあったら、ユルゲン・クロップ(ドイツ)がトップ3に入るのは確実だと思う。ナンバーワン候補筆頭かもしれない。

リバプールを率いる、人気抜群のユルゲン・クロップ監督 クロップの存在を初めて知ったのは、2006年ドイツワールドカップの時だ。まだマインツの監督だったのだが、彼の名を知ったのはマインツとは関係がない。ワールドカップ期間中に毎晩放送されていた、テレビ番組の出演者としてだ。

 さらさらした若々しい髪型に大きな眼鏡、快活に笑い、見事に番組を仕切っていた。てっきり人気司会者だと思っていたら、監督だという。クロップの話に、会場のみんなが笑顔になっていた。タレントとしての才能が傑出しているのは明らかだった。

 それから間もなく、ドルトムントをブンデスリーガ連覇(2010-11、2011-12)に導く偉業を成し遂げた。香川真司が移籍した時なので、日本のファンにもお馴染みだろう。現在はリバプールの監督として、世界最高の監督のひとりと評価されている。

 クロップについては、すでに多くのことが語られているので、ここではサッカー史におけるクロップについて考えてみたい。

 サッカーのスタイルとしては、プレミアリーグのライバルであるマンチェスター・シティとは対照的だ。ジョゼップ・グアルディオラ(スペイン)監督の率いるシティは、強力なボール支配で押し込み、失っても即座のプレッシングで早期のボール奪回を狙う。