人気抜群のクロップ監督。サッカーの根源の喜びをかきたてるキャラクターと戦術 (2ページ目)
バルセロナ監督時代からつづくプレースタイルだ。グアルディオラは、ヨハン・クライフ(オランダ)監督の「ドリームチーム」の時代から引き継がれてきた伝統を受け継いで発展させてきた。
クロップの戦法もプレッシングが大きな特徴だが、こちらはボール支配にはこだわっていない。できるだけ早く敵陣にボールを入れるほうが先決で、そこでボールを失うことも嫌がらない。
むしろ、「ストーミング」と呼ばれた激烈なプレッシングにつづく波状攻撃が真骨頂。同じプレッシングでも、シティはボールを支配したあとの合理的な守備方法として行なっているのに対して、リバプールはプレッシングそのものが目的と言っていいかもしれない。
クロップを筆頭とするストーミング派のルーツを辿ると、まずラルフ・ラングニック(ドイツ)に行き着く。ラングニックからさらに遡ると、プレッシングの元祖ともいえるアリゴ・サッキ(イタリア)になる。では、サッキは何からプレッシングの着想を得たのか。サッキはいくつかの偉大なチームを挙げていた。
「ハンガリー(ホンベド)、オランダ(アヤックス)、リバプール」
ハンガリーとオランダは、それぞれ国内トップクラブだったホンベド、アヤックスとほぼイコールである。単独のクラブチームとして名を挙げられたリバプールは、1970年代後半から80年代にかけての黄金時代を指している。
つまり、元をたどるとグアルディオラとクロップの源流は同じなのだ。グアルディオラがアヤックス→バルセロナの流れをくむ本流とすると、クロップのほうはアヤックスからミランへと枝分かれした、もう1つの流れを引き継いでいるわけだ。
<ハードワークが喜びになる>
ハンガリーとオランダを自らのスタイルのルーツとして挙げたサッキだが、直接的な影響が強いのはリバプールだと思う。
4-4-2とゾーンディフェンスを組み合わせてプレッシングの効果を高めたことが、サッキとミランをあれほど有名にしたのだが、その2つはリバプールが持っていたものだ。
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