2020.06.11

33年前に生まれた画期的戦術。
サッキの「ゾーンプレス」の仕組みとは

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by AFLO

サッカー名将列伝
第1回 アリゴ・サッキ

革新的な戦術や魅力的なサッカー、無類の勝負強さで、見る者を熱くさせてきた、サッカー界の名将の仕事を紹介。第1回は1987年からミランを率い、その戦術で世界中のサッカースタイルをも変えたと言われる、アリゴ・サッキ監督だ。

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<戦術史の分岐点となった監督>

 アリゴ・サッキ監督が率いたミランは、戦術史の分岐点となるチームだ。

 フットボールの歴史にはいくつかの分岐点がある。1974年W杯のオランダはその1つで、トータルフットボールと呼ばれた。リヌス・ミケルス監督が率いたオランダは、ポジションが流動化した攻撃と、「ボール狩り」と呼ばれた激しい集中守備に特徴があった。

80年代後半にミランに採用した戦術で、世界中のサッカーに影響を与えたアリゴ・サッキ監督 87年にミランの監督に就任したサッキは、トータルフットボールの守備戦術をアレンジした「プレッシング」によって一世を風靡している。

「プレッシングは私の発明ではない。1950年代のホンベド(ハンガリー)、70年代のアヤックス(オランダ)、80年代のリバプール(イングランド)がすでに存在していた」(サッキ)

 あまり真に受けてはいけないだろう。トータルフットボールのミケルスも「ブンダーチーム(30年代のオーストリア)がすでに存在していた」と、同じようなことを言っているが、年齢的にミケルスがオーストリアを見ていたとは思えず、サッキもホンベドをよく知らなかったと思う。彼らが受け継いだのは戦術そのものより、志のようなものだろう。